オウンドメディアマーケティングとは|目的・戦略・運用方法を体系的に解説

オウンドメディアマーケティングとは|目的・戦略・運用方法を体系的に解説

デジタルマーケティングの多様化により、企業が顧客と接点を持つ方法は大きく広がりました。特にオウンドメディアを活用したマーケティングは、広告に依存しない集客基盤として注目を集めています。

一方で、以下のような声も増えています。

  • オウンドメディアを始めたいが、何から手をつければよいかわからない
  • 運用しているものの、成果につながっている実感がない
  • 社内で予算を確保するための説得材料が見つからない

そこで本記事では、オウンドメディアマーケティングの基本から、戦略設計、立ち上げ・運用の実践手順、そして成功に導くためのポイントまでを体系的に解説します。弊社が培ってきた知見も織り交ぜながら、読者の皆様が自社に適した戦略と実行計画を描けるようになることを目指します。

オウンドメディアマーケティングとは何か

オウンドメディアマーケティングを正しく理解するためには、まず「オウンドメディアとは何か」という定義から整理する必要があります。この章では、オウンドメディアの本質的な役割と、他のメディアやマーケティング手法との関係性を明確にしていきます。

オウンドメディアの定義と役割

オウンドメディアとは、企業が自ら所有し、運営するメディアのことを指します。具体的には、コーポレートサイト、ブログ、Webマガジン、メールマガジン、SNSアカウントなどが該当します。

しかし、ここで重要なのは「所有している」という形式的な定義ではありません。オウンドメディアの本質は、「企業の事業課題や採用課題を解決するための手段としてのメディア」という点にあります。

一般的な商業メディアであれば、PV数や広告収入が成功の指標になります。しかし、オウンドメディアにおいては、トラフィックの多寡そのものよりも、「事業にどれだけ貢献しているか」が評価の基準となります。

オウンドメディアが担う主な役割としては、以下が挙げられます。

リード獲得

見込み客を集め、問い合わせや資料請求につなげる役割です。BtoB企業においては特に重要な目的となります。検索エンジンからの流入を起点に、ホワイトペーパーのダウンロードやセミナー申し込みといったコンバージョンを獲得していきます。

認知拡大

自社やサービスの存在を広く知ってもらう役割です。まだ課題を自覚していない潜在層に対してもアプローチできる点が、広告とは異なる特徴といえます。

ブランディング

企業としての専門性や信頼性を伝え、ブランドイメージを構築する役割です。一貫したメッセージを発信し続けることで、顧客の記憶に残るブランドを形成していきます。

採用力強化

求職者に対して、企業文化や働く環境、事業への想いを伝える役割です。採用サイトだけでは伝えきれない情報を、コンテンツを通じて発信できます。

暗黙知の形式知化

社内に蓄積されたノウハウや知見を、コンテンツとして言語化・体系化する役割です。これにより、組織としての知識資産が蓄積され、属人化の解消にもつながります。

このように、オウンドメディアは単なる「情報発信の場」ではなく、事業成長のためのマーケティングツールとして位置づけられるべきものです。

トリプルメディアにおける位置づけ

オウンドメディアを理解するうえで役立つのが、「トリプルメディア」というフレームワークです。これは、企業がマーケティングで活用するメディアを3つに分類したものです。

ペイドメディア(Paid Media)

文字通り「お金を払うメディア」です。リスティング広告、ディスプレイ広告、テレビCM、雑誌広告などが該当します。即効性があり、リーチをコントロールしやすい反面、広告費を止めれば効果も止まります。

アーンドメディア(Earned Media)

「獲得するメディア」と訳されます。口コミ、SNSでのシェア、メディア掲載、レビューサイトでの評価などが該当します。第三者からの評価であるため信頼性が高い反面、企業側でコントロールすることが難しいという特性があります。

オウンドメディア(Owned Media)

「所有するメディア」であり、自社でコントロール可能であることが最大の特徴です。掲載する内容やタイミング、デザインなど、すべてを自社の判断で決められます。また、制作したコンテンツは資産として蓄積されていきます。

この3つのメディアは、それぞれ単独で機能するものではありません。むしろ、組み合わせることで相乗効果を発揮します。

例えば、オウンドメディアで質の高いコンテンツを公開し、それをペイドメディア(広告)で拡散させ、共感を得たユーザーがアーンドメディア(SNS)でシェアする、という流れが考えられます。

オウンドメディアは、この循環の「ハブ」として機能します。自社でコントロールできる「本拠地」があるからこそ、他のメディアからの流入を受け止め、関係性を深めていくことが可能になるのです。

コンテンツマーケティングとの関係性

オウンドメディアとしばしば混同されるのが「コンテンツマーケティング」という概念です。両者の関係性を整理しておきましょう。

コンテンツマーケティングとは、価値あるコンテンツを通じて見込み客を引きつけ、関係性を構築し、最終的に購買行動につなげるマーケティング手法の総称です。ブログ記事、動画、ホワイトペーパー、メールマガジン、セミナー、ポッドキャストなど、さまざまな形態のコンテンツが活用されます。

この関係性をわかりやすく表現すると、「オウンドメディアは店舗であり、コンテンツは販売員である」と言えます。店舗(オウンドメディア)がなければ販売員(コンテンツ)は活躍する場を持ちません。一方で、店舗があっても優秀な販売員がいなければ顧客は満足しないでしょう。

また、「コンテンツSEO」という言葉もよく使われます。これは、検索エンジンをタッチポイントとしたコンテンツマーケティングの一形態です。ユーザーが検索するキーワードに対して、最適なコンテンツを提供することで、自然検索からの流入を獲得していきます。

オウンドメディアマーケティングにおいて、コンテンツSEOは重要な集客手段のひとつですが、すべてではありません。メールマガジンやSNSからの流入、直接訪問など、検索以外のタッチポイントも活用しながら、総合的にメディアを運営していくことになります。

どちらの手法が適切かは、目的によって判断する必要があります。検索ニーズが明確に存在する領域であればコンテンツSEOが有効ですし、検索されにくいテーマであれば他のアプローチを検討すべきでしょう。

オウンドメディアマーケティングに取り組むメリット

オウンドメディアの運営には一定のリソースが必要です。では、なぜ多くの企業がオウンドメディアマーケティングに取り組むのでしょうか。この章では、具体的なメリットを3つの観点から解説します。

広告に依存しない集客基盤の構築

近年、多くの企業がオウンドメディアに注目する背景には、広告を取り巻く環境の変化があります。

リスティング広告やSNS広告のCPA(顧客獲得単価)は、競争の激化により年々上昇傾向にあります。特にBtoB領域や競合が多い業界では、広告費の高騰が顕著です。広告費を増やし続けなければ同じ成果を維持できない、という状況に陥っている企業も少なくないでしょう。

オウンドメディアは、この課題に対するひとつの解決策となります。検索エンジンで上位表示を獲得できれば、広告費をかけずに継続的な流入を見込めるからです。

もちろん、オウンドメディアの構築と運営にもコストがかかります。しかし、一度作成したコンテンツは資産として残り続けます。広告のように「お金を払っている間だけ効果がある」というものではなく、「作れば作るほど価値が積み上がる」という特性を持っています。

この違いは、長期的に見ると大きな差となります。広告は「フロー」であり、オウンドメディアは「ストック」です。両者をバランスよく組み合わせることで、安定した集客基盤を構築できるのです。

実際、ある企業ではオウンドメディアの強化に取り組んだ結果、立ち上げから約1年で月間100件を超えるリードを獲得するまでに成長しました。それまではアウトバウンド営業や広告出稿に依存していましたが、オウンドメディアからの安定した流入が生まれたことで、広告費や営業リソースを大幅に削減できたといいます。特筆すべきは、最終的に広告・営業コストをゼロにできた点です。検索ボリュームではなく、サービス検討段階で検索されるキーワードに絞り込んだことが奏功しました。

このように、オウンドメディアは広告依存から脱却し、持続可能な集客基盤を構築するための有効な手段となります。

長期的な費用対効果の向上

オウンドメディアの費用対効果を評価する際には、時間軸を意識することが重要です。

立ち上げ初期は、コンテンツ制作やサイト構築に投資が必要です。また、SEOで成果が出始めるまでには一定の時間がかかります。そのため、短期的に見ると広告よりもROI(投資対効果)が低く見えることがあります。

しかし、中長期で見ると状況は変わってきます。質の高いコンテンツが蓄積され、検索エンジンからの評価が高まると、継続的な流入が得られるようになります。一度上位表示を獲得したコンテンツは、適切にメンテナンスすれば、長期間にわたって成果を生み出し続けます。

例えば、ある記事が月間1,000セッションを獲得しているとします。この記事の制作費が10万円だったとすると、1年後には1.2万セッション分の価値を10万円で得られたことになります。2年、3年と時間が経つほど、コストあたりの成果は向上していきます。

広告であれば、同じセッション数を獲得するために継続的に費用が発生します。この構造的な違いが、オウンドメディアの長期的な費用対効果の高さにつながっています。

ただし、これは「オウンドメディアのほうが安い」ということを意味するわけではありません。初期投資と運用コストを賄える体制がなければ、成果が出る前に頓挫してしまうリスクもあります。中長期的な投資として位置づけ、腰を据えて取り組む覚悟が必要です。

ブランド価値と信頼性の蓄積

オウンドメディアのもうひとつの重要なメリットは、ブランド価値と信頼性を高められることです。

ブランディングとは、「ブランドに意味を持たせ、受け皿を作る」ことです。顧客が企業名やサービス名を聞いたときに、どのようなイメージを持つか。そのイメージを意図的に形成し、強化していくのがブランディングの役割です。

オウンドメディアは、このブランディングに大きく貢献します。なぜなら、コンテンツの内容、デザイン、トーン、発信のタイミングなど、すべてを自社でコントロールできるからです。

広告やPR記事では、メディアの編集方針や広告規定に縛られます。SNSでは、プラットフォームのアルゴリズムや仕様変更に左右されます。しかし、オウンドメディアであれば、自社のブランドガイドラインに沿った一貫したコミュニケーションが可能です。

また、継続的にコンテンツを発信し続けることで、読者との関係性が深まっていきます。役立つ情報を提供し続ける企業に対して、読者は自然と信頼感を抱くようになります。

ここで重要なのは、コンテンツの本質は「情報発信」ではなく「コミュニケーション創出」であるという視点です。

一方的に情報を発信するのではなく、読者の悩みや課題に寄り添い、解決の糸口を提供する。そうしたコンテンツを通じて、読者との「対話」が生まれます。この対話の積み重ねが、ブランドへの信頼を形成していくのです。

情報を詰め込んだだけのコンテンツと、読者の心に何かを残すコンテンツでは、長期的な効果が大きく異なります。オウンドメディアを通じたブランディングを成功させるためには、この「コミュニケーション創出」という視点を忘れないようにしましょう。

戦略設計の進め方

オウンドメディアで成果を出すためには、闇雲にコンテンツを作り始めるのではなく、しっかりとした戦略設計が必要です。この章では、目的設定からKPI設計、ターゲット設定、コンテンツ企画まで、戦略設計の進め方を解説します。

目的とKGI・KPIの設定

オウンドメディアマーケティングにおいて、最も重要なステップが「目的の明確化」です。「何のために運用するのか」という問いに対する答えが、すべての判断基準になります。

目的が曖昧なままオウンドメディアを始めると、「とりあえず記事を書く」という作業に終始してしまいがちです。記事は増えても、それが事業にどう貢献しているのかがわからない。結果として、社内からの理解も得られず、予算も削減されてしまう。このパターンは非常に多く見られます。

目的を明確にしたら、次はKGI(Key Goal Indicator)とKPI(Key Performance Indicator)を設定します。

KGIは「最終的に達成したいゴール」を示す指標です。例えば、「月間リード獲得数100件」「指名検索数の増加」「採用応募数の増加」などが該当します。

KPIは「KGIを達成するための中間指標」です。例えば、「月間セッション数」「コンバージョン率」「検索順位」などが該当します。

KGIとKPIの関係を、登山に例えるとわかりやすいでしょう。KGIが「山頂に到達すること」だとすると、KPIは「2合目を通過すること」「5合目を通過すること」といった中間地点のチェックポイントです。

KPI設計においては、「SMART」なKPI設計を心がけることをお勧めします。

  • Specific(具体的):曖昧ではなく、具体的に定義されている
  • Measurable(測定可能):数値で測定できる
  • Achievable(達成可能):現実的に達成可能な水準である
  • Relevant(関連性):事業目標と関連している
  • Time-bound(期限):達成期限が明確である

ここでひとつ、重要なポイントをお伝えします。認知獲得段階のオウンドメディアでは、PV数をKPIに置かないことをお勧めします。

立ち上げ初期は、まだコンテンツが少なく、検索順位も低い状態です。この段階でPV数をKPIにすると、達成が難しく、チームのモチベーション低下につながりかねません。

代わりに、「公開記事数」「狙ったキーワードでの検索順位」など、自分たちでコントロールしやすい指標をKPIに設定することをお勧めします。検索順位が上がれば、PVは自然と増加していきます。

フェーズごとに見るべきKPIは変化します。集客段階では「検索順位」「インデックス数」、ファン化段階では「回遊率」「滞在時間」「リピート率」、成果獲得段階では「CV数」「CVR」「リード獲得単価」といった具合です。

自社が今どのフェーズにいるかを把握し、適切なKPIを設定することが重要です。

小さな成功体験から始める戦略アプローチ

戦略設計において見落とされがちなのが、「証拠づくり」の重要性です。特に大規模な組織や、複数のステークホルダーが関わるプロジェクトでは、理論だけでは関係者を動かすことが難しい場面があります。

ある大手企業が運営する健康情報メディアの事例をご紹介します。このメディアは、1年間にわたり相当な予算を投じて運営したにも関わらず、月間8万UUという低迷した状態が続いていました。

このような状況で、いきなり大規模な改革を提案しても、関係者からの理解を得ることは困難です。そこで取られたアプローチが、「限られたリソースで証拠をつくる」という戦略でした。

具体的には、削減できた予算の一部(約60万円)を使い、信頼できるライターに高品質なコンテンツを少数(4本)だけ依頼しました。この「質」に特化した投資が予想を上回る成果を生み、2ヶ月目には前月比10%、3ヶ月目にもさらに10%のグロースを実現しました。

この小さな成功体験があったことで、プロジェクト全体の方向性について関係者の合意を得られるようになりました。その後、体制を整え本格的にスケールアップした結果、最終的には8万UUから300万UUへと40倍の成長を達成したのです。

この事例から学べるポイントは以下の通りです。

  • スモールスタートで成功体験を作る: 最初から大きな投資をするのではなく、限られたリソースで「点」となる成功事例を作る
  • 質に集中投資する: 数を追うのではなく、少数の高品質コンテンツで成果を出す
  • 証拠で関係者を動かす: 理論ではなく、実際の数字で方向性の正しさを示す

特に、社内説得が必要な場面や、既存のやり方を変えることへの抵抗がある場面では、このアプローチが有効です。

ターゲット設定とカスタマージャーニー設計

誰に向けてコンテンツを作るのか。ターゲット設定は、コンテンツの質を大きく左右する重要な要素です。

ペルソナとは、ターゲット像を具体的な人物像として描いたものです。年齢、性別、職種、役職、抱えている課題、情報収集の方法など、詳細に設定することで、より的確なコンテンツを作れるようになります。

BtoB企業の場合は、個人の属性だけでなく、企業属性も考慮する必要があります。業種、従業員規模、売上規模、組織の意思決定プロセスなど、企業としての特性も踏まえてペルソナを設計しましょう。

ペルソナを設定したら、次はカスタマージャーニーを設計します。カスタマージャーニーとは、顧客が課題を認識してから購買に至るまでの一連のプロセスを可視化したものです。

例えば、BtoB向けのマーケティングツールを提供している企業であれば、次のようなカスタマージャーニーが考えられます。

  1. 認知段階:マーケティングの課題を漠然と感じている。解決策を探り始めている。
  2. 興味・関心段階:課題が明確になり、解決策を積極的に調べている。
  3. 比較・検討段階:具体的なツールやサービスを比較検討している。
  4. 購入・導入段階:導入を決め、契約・導入準備を進めている。
  5. 活用・継続段階:ツールを活用し、成果を出している。追加ニーズが発生している。

それぞれの段階で、顧客はどのような情報を求めているでしょうか。認知段階では「業界の課題やトレンド」、比較・検討段階では「ツールの選び方や比較情報」、活用段階では「活用ノウハウや事例」といった具合です。

カスタマージャーニーに沿ってタッチポイントを設計することで、各段階の顧客に適切なコンテンツを届けられるようになります。

ここでお伝えしたいのは、「読み手に憑依する」感覚の重要性です。

ペルソナやカスタマージャーニーはあくまでフレームワークです。大切なのは、「この人は今どんな気持ちなのか」「何に悩んでいるのか」「何を知りたいのか」を、自分ごととして想像することです。

作り手の「伝えたいこと」ではなく、読者の「知りたいこと」を起点にコンテンツを設計する。この視点を持つことで、顕在ニーズだけでなく、潜在ニーズも捉えたコンテンツが生まれます。

キーワード設計とコンテンツ企画

コンテンツSEOにおいて、キーワード設計は成否を左右する重要な工程です。どのようなキーワードで上位表示を狙うかによって、集客できるユーザーの質と量が変わってきます。

キーワード設計の基本的な流れは以下のとおりです。

軸となるキーワードの洗い出し

まず、自社のサービスや商品に関連するキーワードを幅広く洗い出します。サービス名、課題、悩み、解決策など、さまざまな切り口から候補を挙げていきます。

検索ボリュームと競合性の調査

洗い出したキーワードについて、月間検索ボリューム(どれくらい検索されているか)と競合性(上位表示の難易度)を調査します。検索ボリュームが大きくても、競合が強すぎると上位表示は難しくなります。

優先順位の決定

検索ボリューム、競合性、自社との関連性、コンバージョンへの近さなどを総合的に判断し、優先順位を決定します。

ただし、キーワードから逆算するだけでは不十分です。ユーザーニーズから逆算したキーワード選定が重要です。

「このキーワードで検索するユーザーは、何を知りたいのか」「検索した後、どうなりたいのか」という視点を持つことで、より的確なキーワードを選定できます。

前述の事例では、検索ボリュームではなく、ツール・サービスの検討段階で検索されるキーワードに絞り込むアプローチを取りました。業界特有の専門用語や機器名称との掛け合わせキーワードを設計し、多岐にわたるサービスの中から最初は最重要な3つに狙いを定めたのです。この「スモールスタートで成功体験を作る」戦略により、運用を加速させることができました。

キーワードが決まったら、コンテンツ企画に進みます。ここで洗い出すべき項目は以下のとおりです。

  • 検索背景:なぜこのキーワードで検索するのか
  • 顕在ニーズ:明確に求めている情報は何か
  • 潜在ニーズ:本人も気づいていない深層のニーズは何か
  • 最高のゴール:コンテンツを読んだ後、読者はどうなるか
  • ストーリー:どのような順序で情報を伝えるか

ここで意識したいのは、コンテンツは「情報を伝える箱」ではなく「コミュニケーションのきっかけ」であるということです。

読者はただ情報を受け取りたいわけではありません。自分の課題を解決したい、不安を解消したい、もっと良くなりたいと考えています。コンテンツは、その願望に応えるための「対話」の起点となるのです。

この視点を持つことで、単なる情報の羅列ではなく、読者の心を動かすコンテンツが生まれます。

立ち上げから運用までの実践手順

戦略設計ができたら、いよいよ実行フェーズです。この章では、運用体制の構築からコンテンツ制作、効果測定まで、実践的な手順を解説します。

運用体制とリソースの確保

オウンドメディアを継続的に運営していくためには、適切な体制とリソースが必要です。

オウンドメディア運営に必要な主な役割は以下のとおりです。

プロジェクトマネージャー / 編集長

全体の方針策定、スケジュール管理、品質管理を担当します。経営層への報告や社内調整も重要な役割です。

ディレクター

個別のコンテンツ企画と制作進行を担当します。キーワード選定、構成作成、ライターへの指示、校正などを行います。

ライター

コンテンツの執筆を担当します。社内の担当者が書く場合もあれば、外部のライターに依頼する場合もあります。

デザイナー

サイトデザイン、記事内の図解、アイキャッチ画像などを担当します。

エンジニア / Web担当者

CMSの設定、サイトの技術的な改善、分析ツールの設定などを担当します。

すべての役割を社内で賄う必要はありません。多くの企業では、コア部分(方針決定、品質管理)は社内で行い、実務(コンテンツ制作、デザイン)は外部パートナーに委託するという形をとっています。

費用相場の目安としては、構築費で100万円から300万円程度、運用費で月額90万円から130万円程度が一般的です。ただし、規模や目標、内製化の程度によって大きく変動します。

ここでお伝えしたいのは、専門領域を信頼しきる役割分担の重要性です。

オウンドメディア運営では、戦略設計、SEO、コンテンツ制作、デザイン、技術など、さまざまな専門領域が関わります。すべてを1人でカバーするのは現実的ではありません。

重要なのは、「誰が何を担当するか」を明確にし、それぞれの専門領域を信頼して任せることです。役割分担が曖昧だと、責任の所在が不明確になり、品質低下やスケジュール遅延につながります。

理想は、「機械的に進行できる」レベルまで役割と責任を明確化することです。毎回「これは誰がやる?」と確認するのではなく、プロセスとして確立されている状態を目指しましょう。

コンテンツ制作のワークフロー

コンテンツ制作においては、一貫したワークフローを確立することが重要です。

一般的なコンテンツ制作のワークフローは以下のとおりです。

  1. キーワード選定・企画立案:どのキーワードで、どのようなコンテンツを作るかを決定
  2. 構成作成:見出し構成と各セクションで書くべき内容を整理
  3. 執筆:構成に沿って本文を執筆
  4. 校正・編集:誤字脱字、表現の改善、事実確認を実施
  5. 入稿・公開:CMSへの入稿、最終チェック、公開

このワークフローにおいて、常に意識すべきなのが「ユーザーファースト」の姿勢です。検索エンジンで上位表示を狙うことは重要ですが、最終的に読むのは人間です。読者にとって価値があるコンテンツでなければ、長期的な成果にはつながりません。

また、正しい情報発信の責任を意識することも重要です。オウンドメディアは企業を代表するメディアです。誤った情報や根拠のない主張を発信すれば、企業の信頼を損なう可能性があります。専門家による監修や、引用元の明確化を心がけましょう。

良質なコンテンツの条件としては、次の2点が挙げられます。

  • 読み手の悩みが解決される
  • その企業だからこそ発信する価値がある

特に後者は、競合との差別化において重要です。誰が書いても同じ内容であれば、読者が自社のオウンドメディアを選ぶ理由がありません。自社ならではの知見、経験、視点を盛り込むことで、オリジナリティのあるコンテンツが生まれます。

近年注目されているのが、AI時代のコンテンツ制作です。ChatGPTをはじめとするAIツールの進化により、コンテンツ制作の効率は大きく向上しました。

しかし、AIが生成するコンテンツには課題もあります。いわゆる「60点問題」です。AIは一般的な情報をまとめることは得意ですが、そのままでは平均的な品質にとどまります。上位表示を獲得し、読者の心を動かすためには、60点では不十分です。

この課題を克服するためには、独自の視点や経験を組み込むことが必要です。AIをベースラインとして活用しつつ、自社ならではの知見を加えることで、差別化されたコンテンツを効率的に制作できます。

また、AIの活用は「暗黙知の形式知化」にも役立ちます。社内の専門家が持つノウハウを、AIの補助を得ながらコンテンツとして言語化していく。これにより、専門のライターでなくても、質の高いコンテンツを生み出せるようになります。

CVR改善の取り組み

オウンドメディアで成果を出すためには、トラフィックを増やすだけでなく、コンバージョン率(CVR)の改善も欠かせません。

検索上位を獲得しても、そこからリード獲得につながらなければ、事業への貢献は限定的です。ユーザーの状況・動機・ニーズに応じて、適切なCTA(Call To Action)を設計することが重要です。

実践的なCVR改善のポイントをご紹介します。

記事内CTAの最適化

CTAの配置や訴求内容を、ユーザーの検索意図に合わせてチューニングします。情報収集段階のユーザーには「詳しい資料をダウンロード」、比較検討段階のユーザーには「無料相談を申し込む」など、段階に応じた誘導が効果的です。

フォームの最適化(EFO)

CTAクリック後の離脱を防ぐため、お問い合わせフォームの項目を見直します。入力項目が多すぎると離脱率が上がるため、必要最低限の項目に絞ることが重要です。

継続的なテスト

CTAのデザイン、配置、文言などを継続的にテストし、改善を重ねます。小さな改善の積み重ねが、大きな成果の差につながります。

ある企業では、検索上位を獲得した記事について、記事内CTAやUIの設計・改修を徹底的に行いました。ユーザーの状況に応じてCTA配置や訴求内容をチューニングし、CTAクリックが増えると次はフォームでの離脱が課題化したため、フォーム項目の簡略化やUI見直しなどEFO施策も実施しました。

この「キーワード獲得だけでなくCVR改善も徹底する」というアプローチにより、立ち上げ半年で月数十件、1年後には月100件を超えるお問い合わせを獲得するに至りました。

SEOで上位を取ることと、そこからコンバージョンを獲得することは、別の取り組みとして捉える必要があります。両方を同時に最適化していくことで、オウンドメディアの事業貢献度を最大化できます。

効果測定と継続的な改善

オウンドメディアは、公開して終わりではありません。効果を測定し、継続的に改善していくことで、成果は最大化されます。

効果測定のためのモニタリング環境を構築しましょう。一般的には、Google Analytics(アクセス解析)とGoogle Search Console(検索パフォーマンス分析)が基本ツールとなります。

ただし、すべての指標を追いかける必要はありません。「見るべき指標を絞る」ことが重要です。あれもこれもと指標を増やすと、本当に重要な変化を見落としてしまいます。

前章で設定したKPIを中心に、週次または月次でモニタリングする指標を決めておきましょう。それ以外の詳細データは、課題が発生したときに深掘りすれば十分です。

効果測定の結果を踏まえて、コンテンツの改善(リライト)を行います。コンテンツは「育てる」ものです。公開後も継続的にメンテナンスすることで、検索順位やコンバージョン率を向上させることができます。

リライトの対象となるコンテンツの例としては、以下が挙げられます。

  • 検索順位が惜しい位置(11位から20位など)で停滞している
  • 検索順位は高いが、CTR(クリック率)が低い
  • 流入は多いが、直帰率が高い、または滞在時間が短い
  • 情報が古くなっている

リライトの際は、単に情報を追加するだけでなく、「なぜこの順位で止まっているのか」「なぜ読者が離脱しているのか」を分析し、根本的な改善を図ることが重要です。

最後に、オウンドメディアで成果が出るまでには時間がかかることを理解しておきましょう。一般的に、半年から1年程度は成果が見えにくい期間が続きます。この時期を乗り越えられるかどうかが、成功と失敗の分かれ目となります。

中長期的な投資として位置づけ、焦らずに質の高いコンテンツを積み上げていく姿勢が大切です。

成功に導くためのポイントと注意点

ここまで、オウンドメディアマーケティングの戦略設計から運用までを解説してきました。最後に、成功と失敗を分けるポイントと、よくある失敗パターンについてお伝えします。

成果が出るまでの時間軸を理解する

オウンドメディアでよくある失敗のひとつが、「短期的な成果を求めすぎること」です。

SEOで上位表示を獲得するには時間がかかります。新規サイトであればドメインの評価が上がるまでに数ヶ月、コンテンツが評価されて順位が安定するまでにさらに数ヶ月かかることも珍しくありません。

この現実を理解せずに、「3ヶ月でリード獲得を倍増させたい」といった目標を立てると、ほぼ確実に未達となります。成果が出ないことで社内の支持を失い、予算が削減され、最終的に頓挫してしまう。このパターンは非常に多いです。

成功しているオウンドメディアの多くは、3年以上継続しています。最初の1年は「投資期間」と割り切り、コンテンツの蓄積と基盤づくりに集中する。2年目以降に成果が出始め、3年目以降に本格的なリターンを得る。このような時間軸で計画を立てることが現実的です。

社内の理解を得るためには、経営層や関係部署に対して、この時間軸を丁寧に説明することが重要です。「オウンドメディアは中長期的な投資であり、短期的な成果を期待するものではない」というコンセンサスを形成しておきましょう。

目的と手段の一貫性を保つ

オウンドメディア運営で陥りやすいもうひとつの罠が、「手段の目的化」です。

「毎月10本記事を公開する」という目標を立てたとします。最初は目的達成のための手段だったはずですが、いつの間にか「10本公開すること」自体が目的になってしまう。本来の目的であった「リード獲得」は二の次になり、とにかく数をこなすことに意識が向いてしまう。

この問題は、計画が詳細すぎることで発生しやすくなります。細かく決めれば決めるほど、計画通りに進めることが「正しいこと」になってしまい、目的を見失いやすくなるのです。

この課題に対する解決策として、「余白設計」という考え方をお伝えします。

余白設計とは、「定数と変数を分離する」ことです。変えてはいけないもの(定数)と、状況に応じて変えてよいもの(変数)を明確に区別します。

例えば、「年間でリード獲得を1.5倍にする」という目的は定数です。一方、「毎月10本記事を公開する」という手段は変数です。もし記事数を減らしても、コンバージョン率の改善でリード獲得が増えるのであれば、手段を変更すべきです。

柔軟に対応できる「余白」を意識的に組み込むことで、手段の目的化を防ぐことができます。

また、成果にコミットするほど領域が広がるという視点も重要です。

リード獲得を本気で増やそうとすると、コンテンツ制作だけでは限界があることに気づきます。サイトの導線設計、フォームの最適化、営業との連携、MAツールの活用など、さまざまな領域に踏み込む必要が出てきます。

「オウンドメディア」という枠にとらわれず、カテゴリーではなくコミュニケーション視点で考えることで、施策の幅が広がります。目的達成のために必要なことは何でもやる、という姿勢が成果につながります。

よくある失敗パターンを回避する

最後に、オウンドメディアでよくある失敗パターンをまとめておきます。事前に把握しておくことで、同じ轍を踏むことを避けられるでしょう。

目的が曖昧なまま始めてしまう

「とりあえずオウンドメディアを始めよう」という曖昧なスタートは、ほぼ確実に失敗につながります。何のためにやるのか、成功とは何かを明確にしてから始めましょう。

運用体制が整っていない

「記事を誰が書くのか決まっていない」「更新が滞っている」という状態では、成果は出ません。持続可能な体制を構築してから始めることが重要です。

「書きたいこと」中心のコンテンツになる

自社が伝えたいことと、読者が知りたいことは必ずしも一致しません。読者ニーズを起点としたコンテンツ設計を心がけましょう。

作って終わり(メンテナンス不足)

公開した記事を放置していると、情報が古くなり、検索順位も低下します。定期的なリライトと改善が必要です。

そもそもオウンドメディアが最適でない場合

オウンドメディアは万能ではありません。事業の状況やターゲットによっては、広告やイベント、営業強化など、他の手法のほうが適している場合もあります。手段ありきではなく、目的から逆算して最適な手法を選びましょう。

まとめ

本記事では、オウンドメディアマーケティングの基本から、戦略設計、運用方法、成功のポイントまでを体系的に解説しました。

オウンドメディアは、単なるWebマガジンではなく、「事業課題を解決するためのマーケティングツール」です。トリプルメディアの中でも、自社でコントロールでき、資産として蓄積されるという特性を持っています。

成功のためには、目的の明確化とKGI・KPI設計、ターゲット設定とカスタマージャーニー設計、そしてキーワード設計とコンテンツ企画という戦略設計が欠かせません。また、適切な運用体制の構築と、継続的な改善も重要です。

オウンドメディアは短期的な成果を期待するものではありません。中長期的な投資として位置づけ、焦らずに質の高いコンテンツを積み上げていく姿勢が求められます。

手段の目的化を防ぎ、柔軟に対応できる余白を持ちながら、事業成長につながるオウンドメディアを育てていただければと考えます。

自社の状況に合わせた戦略を描き、一歩ずつ実行に移していくことで、オウンドメディアは確実に事業に貢献する資産となるでしょう。

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著者

永田 さおり

永田 さおり

Growth Architect

業界歴10年以上。2017年株式会社MOLTSに参画。BtoB・BtoC問わず多様な業種業態でマーケティングの立ち上げから実行までを一貫支援。組織開発やコミュニケーション設計を中心にコンサルティングを行う。

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