
オウンドメディアの立ち上げ方を解説|手順・費用・成功のポイント
デジタルマーケティングの重要性が高まる中、オウンドメディアを活用したインバウンドマーケティングに取り組む企業が増えています。広告費の高騰や顧客獲得競争の激化を背景に、自社でコントロールできるメディアを持つことの価値が見直されてきました。
一方で、以下のような声も増えています。
- オウンドメディアを立ち上げたいが、何から始めればよいか分からない
- 費用や体制がどれくらい必要なのか、見当がつかない
- 立ち上げても成果が出るのか不安で、判断に迷っている
そこで本記事では、オウンドメディアの立ち上げを検討している方に向けて、計画から準備、運用開始までの具体的な手順を解説します。費用相場、必要な体制、よくある失敗パターンと成功のポイントまで網羅的にお伝えしますので、自社での意思決定にお役立てください。
目次
オウンドメディア立ち上げの全体像
オウンドメディアの立ち上げを成功させるためには、まず全体像を把握することが大切です。やみくもにサイトを構築し、コンテンツを作り始めても、成果につながる可能性は低くなります。ここでは、立ち上げの3段階と、そもそも「やるべきか」を判断するための基準について解説します。
立ち上げの3段階(計画・準備・運用)
オウンドメディアの立ち上げは、大きく「計画」「準備」「運用」の3つの段階に分けられます。それぞれの段階で検討すべき内容や必要な要素が異なるため、順を追って進めていくことが重要です。
計画段階で検討すべき内容
計画段階は、オウンドメディアの方向性を決める最も重要なフェーズです。この段階での設計が、その後の成果を大きく左右します。
検討すべき項目として、まず運用目的やミッションの明確化が挙げられます。「何のためにオウンドメディアを運用するのか」という問いに対して、明確な答えを持っておく必要があります。リード獲得なのか、認知拡大なのか、ブランディングなのか、採用強化なのか。目的によって、取るべき戦略や見るべき指標が変わってきます。
次に、成果指標や目標の設定です。目的を達成したかどうかを判断するための定量的な指標を設定します。例えば、リード獲得が目的であれば「月間問い合わせ数」、認知拡大が目的であれば「指名検索数」などが指標になります。
予算やそれに適した運用体制の検討も欠かせません。どれくらいの投資ができるのか、社内で対応できる範囲はどこまでか、外部パートナーをどのように活用するかを整理します。
ターゲット設定とリサーチでは、どのようなユーザーに向けてメディアを展開するかを決めます。業種、職種、役職、抱えている課題など、できるだけ具体的に定義することで、コンテンツの方向性が明確になります。
そして、これらを踏まえたオウンドメディア設計を行います。サイトのコンセプト、流入経路、コンバージョンまでの導線などを設計します。
準備段階で必要な要素
計画が固まったら、実際にオウンドメディアを立ち上げるための準備に入ります。
予算の確保が必要です。構築費と運用費の両方を見込んだ予算計画を立てます。初年度は特に投資フェーズとなるため、十分な予算確保が求められます。
人材の確保も重要です。オウンドメディア責任者、ディレクター、ライター、デザイナーなど、役割に応じた人材を揃えます。全てを社内で賄う必要はなく、外部パートナーとの協業も選択肢に入ります。
サイト構築では、ドメイン取得、サーバー契約、CMS選定、コーディング、各種ツールの導入などを行います。技術的な要素が多いため、専門知識を持った人材やパートナーの関与が必要になることが多いです。
運用段階で必要な要素
サイトが公開されたら、いよいよ運用段階に入ります。
コンテンツ制作では、計画段階で設計したキーワード戦略に基づいて、継続的にコンテンツを作成・公開します。自社で作成するか、外部ライターに依頼するかは、予算や社内リソースによって判断します。
効果測定・分析では、設定した指標をモニタリングし、現状を把握します。SEOや分析に関するスキルが必要になるため、専門人材の配置や外部サポートの活用を検討します。
改善施策の立案・実施では、分析結果をもとに、コンテンツの改善やサイト構造の最適化などを行います。公開して終わりではなく、継続的な改善サイクルを回すことが成果につながります。
立ち上げ前に確認すべき「やるべきか」の判断基準
オウンドメディアの立ち上げを検討する際、見落としがちなのが「そもそもやるべきかどうか」という判断です。「競合がやっているから」「流行っているから」といった理由だけで立ち上げても、成果につながらないケースは少なくありません。
オウンドメディアは全ての企業に適しているわけではありません。自社の事業特性やマーケティング施策との関係を考慮した上で、取り組むかどうかを判断する必要があります。
オウンドメディアが有効なケース
デジタルサービスを提供している企業は、オウンドメディアとの親和性が高い傾向にあります。ターゲットとなるユーザーがオンラインで情報収集する可能性が高く、検索をタッチポイントとしたアプローチが効果的です。
全国展開している企業も、オウンドメディアの恩恵を受けやすいです。地域を問わず集客できるため、投資に対するリターンが見込みやすくなります。
市場規模が大きい領域でビジネスを展開している場合も、検索ボリュームが確保できるため、オウンドメディアによる集客が期待できます。
実際、ある企業では、アウトバウンド営業に依存していたリード獲得をオウンドメディアに転換した結果、立ち上げから1年で月100件を超えるお問い合わせを獲得するまでに成長しました。広告費や営業リソースに依存せず、継続的にリードを創出できる体制を構築できたことが、大きな成果につながっています。
投資対効果が見合わないケース
一方で、アナログサービス中心の企業では、ターゲットとなるユーザーがオンラインで情報収集しない可能性があります。その場合、別のマーケティング施策の方が効果的かもしれません。
地域限定のビジネスでは、検索ボリュームが限られるため、オウンドメディアへの投資が見合わないケースがあります。地域密着型の施策の方が効率的な場合もあります。
狭い市場、いわゆるニッチな領域では、対象となるキーワードの検索ボリュームが少ないため、オウンドメディア単体での大きな成果は期待しにくいです。
特にBtoB企業では、BtoCと比較してターゲットが限定的であり、一度方向性を決めると軌道修正が困難になる特徴があります。そのため「どうやるか」以前に「やるかやらないか」の判断が成功の鍵を握ると言えます。
オウンドメディアはあくまで多くの施策のひとつです。自社の事業特性や他のマーケティング施策との関係を考慮した上で、取り組むかどうかを判断することが大切です。
オウンドメディア立ち上げの手順
オウンドメディアを立ち上げる判断をしたら、具体的な手順に沿って進めていきます。ここでは、計画段階から準備段階にかけて押さえるべきポイントを順番に解説します。
目的・ミッションの定義
オウンドメディアの立ち上げにおいて、最初のステップは目的を明確にすることです。「何のためにオウンドメディアを運用するのか」という問いに対して、明確な答えを持っておく必要があります。
目的の定義が重要な理由は、それが設計や運用フェーズにおける全ての判断基準になるからです。解決すべき課題の優先度、取るべき戦略、運用体制など、あらゆる意思決定の基準となります。目的が曖昧なままスタートすると、途中で「何のためにコンテンツを作り続けているのか」が分からなくなり、運用が形骸化してしまうリスクがあります。
代表的な運用目的の例
リード獲得は、特にBtoBオウンドメディアに多い目的です。サービスや商品の問い合わせや資料請求といったリードを獲得することを目指します。広告でのリード獲得コストが上昇傾向にある中、オウンドメディアによる継続的なリード創出の価値が高まっています。
認知拡大は、サービスや商品自体を知らない「非認知層」に向けてのアプローチです。サービス名や会社名での検索が見込めない場合、ターゲットが関心を持ちそうなコンテンツを発信することで、認知のきっかけを作ります。
ブランディングは、「ブランドに意味を持たせ、受け皿を作ること」です。「〇〇を重視するならこの会社」というように、自社サービスの強みや特徴をユーザーに認知してもらうことを目指します。
採用力の強化では、社員インタビューやイベント、日々の働き方などを発信することで、会社のカルチャーやビジョンに共感する採用候補者の獲得を目指します。
目的を定めたら、それを達成したかどうかを判断するための成果指標も設定します。リード獲得であれば「問い合わせ数」、認知拡大であれば「新規ユーザー数」や「指名検索数」など、定量的に測定できる指標を選びます。
重要なのは、その指標の達成が事業課題の解決に紐づいているかどうかです。最終的な成果指標の達成に対して、マイルストーンとして中間目標を立てておくと、進捗管理がしやすくなります。
ターゲット・ペルソナの設計
目的が明確になったら、次はターゲットを設定します。どのようなユーザーに向けてオウンドメディアを展開するかを決めることで、コンテンツの方向性が明確になります。
ペルソナとは、ターゲットとなる顧客像を具体的に設定したものです。年齢、性別、業種、職種、役職、抱えている課題、情報収集の方法など、実在する人物のように具体的に定義します。
ペルソナを設定することで、いくつかのメリットがあります。
まず、コンテンツの企画がしやすくなります。「このペルソナは何に悩んでいるか」「どのような情報を求めているか」という視点で考えることで、ユーザーニーズに沿ったコンテンツを企画できます。
次に、チーム内で共通認識を持てます。抽象的な「ターゲット層」ではなく、具体的な人物像として共有することで、コンテンツの方向性にブレが生じにくくなります。
また、キーワード設計の精度が上がります。ペルソナがどのような言葉で検索するか、どのような情報ニーズを持っているかを想像しやすくなり、より適切なキーワードを選定できます。
BtoBの場合は、ペルソナ個人の属性に加えて、所属する企業の業種や規模、役職や決定権の有無なども定義しておく必要があります。意思決定者が複数人に渡ることが多いBtoB商材では、誰に向けてコンテンツを発信するかによって、内容や訴求ポイントが変わってきます。
ペルソナ設定は、顧客へのヒアリングやアクセス解析、競合メディアの分析など、複数の情報源を総合的に判断して決定します。思い込みではなく、できるだけ客観的なデータに基づいて設定することが大切です。
戦略・KPI設計
目的とターゲットが定まったら、ゴールに到達するための戦略を設計します。戦略設計では、リソースをどこに投下するかが重要になります。
オウンドメディアの戦略設計が難しいとされる理由は、絶対的な成功パターンを定義しにくいことにあります。運用の目的に応じて様々な事業課題を解決できる一方で、できることが幅広いがゆえに、全てのオウンドメディアに共通する正解がないのです。
戦略設計のポイント
まず、「やること」と同時に「やらないこと」を決めます。多くの企業では、オウンドメディアにかけられるリソースは限られています。検索向けコンテンツもSNS向けコンテンツも作る、動画もメールマガジンもやってみる、といった形で闇雲に施策を展開しても、成果には直結しにくいです。「いかに無駄なく成果を出せるか」という視点で、優先順位を明確にすることが重要です。
弊社の経験では、多岐にわたるサービスを持つ企業でも、最初は最重要な3つの領域に絞って勝ち切ることに集中した結果、短期間で成功体験を作り、その後の運用を加速させることができました。スモールスタートで確実に成果を出し、その実績をもとに展開していく戦略が効果的です。
ある企業では、複数のサービスを展開する中でオウンドメディアの立ち上げに着手しましたが、すべてのサービスを一度にカバーしようとせず、検索ボリュームではなくサービスの検討段階で検索されるキーワードに絞る戦略を取りました。業界特有の専門用語と掛け合わせたキーワードを設計し、最初は最重要な3つのサービス領域にだけ注力したのです。
この「選択と集中」によって、限られたリソースの中でも短期間で検索上位を獲得。成功体験が生まれたことでチーム内のモチベーションが高まり、その後の運用を加速させる好循環が生まれました。結果として、立ち上げ1年後には月100件を超えるリードを獲得するまでに成長しています。
次に、フェーズを分けて戦略を立てます。「リードを獲得したい」「ブランディングしたい」「直接収益化したい」など、目的が複数ある場合は、同時並行で進めるのではなく、フェーズを区切って戦略を立てていきます。例えば、まずは認知拡大とリード獲得を優先し、メディアが成長した段階で収益化を検討する、といった形です。
「余白」のある戦略設計
戦略設計において見落としがちなのが、「柔軟性を持った計画づくり」です。詳細な行動計画を立てすぎると、それに従って動く必要がある人の数が増え、計画変更のハードルが高くなります。データを振り返っても、計画変更ができなければ改善に活かせません。
目的達成のために、「変えられること(変数)」と「変えられないこと(定数)」を明確に分離することが重要です。この設計により、メンバーが計画変更の判断に参加しやすくなり、データの振り返りから改善を実行する組織体制が整います。
運用体制やリソース、予算を把握した上で、「何を変えられるか」を定義することで、目標に真摯に向き合える組織土壌が形成されます。
KPI設計の考え方
KPI(重要業績評価指標)は、KGI(重要目標達成指標)から逆算して設定します。KPIはあくまで中間目標なので、まずは最終目標であるKGIを明確にすることが出発点です。
KPIは運用フェーズに応じて変えていく必要があります。立ち上げ期、成長期、成熟期では、見るべき指標が異なります。
立ち上げ期は、具体的な数値目標よりも「運用体制の基盤づくり」といった行動目標にすることをお勧めします。オウンドメディアは、ローンチ後すぐに成果が出る施策ではありません。「月〇本のコンテンツを公開する」「キーワード設計を完了させる」といった、成果につながる行動を指標にすると、チームのモチベーション維持にもつながります。
成長期には、集客に関する指標を重視します。対策キーワードの検索順位、表示回数、クリック数、セッション数などが該当します。
成熟期には、コンバージョンに関する指標にシフトします。CV数、CVR(コンバージョン率)、資料ダウンロード数、問い合わせ数などを見ていきます。
重要なのは、見るべき指標を絞ることです。指標が多すぎると、どこに注力すべきか分からなくなります。フェーズに応じて優先度の高い指標を選び、集中してモニタリングすることが大切です。
サイト構築の準備
戦略が固まったら、実際にサイトを構築する準備に入ります。ワイヤーフレームを作成し、必要な機能や各ページの要件定義を行います。
ドメインの決定
ドメイン名は、企業名やサービス名、サイト名から決めるのが一般的です。覚えやすく、ブランドと紐づくドメインを選ぶことで、認知度向上にも寄与します。
既存のコーポレートサイトのサブディレクトリとして構築するか、独立したドメインで構築するかは、目的や運用方針によって判断します。SEOの観点からは、既存サイトの評価を活かせるサブディレクトリが有利とされますが、ブランディングの観点から独立ドメインを選ぶケースもあります。
サーバーの選定
サーバーは、自社専用サーバーかクラウド型サービスかを選定します。セキュリティ要件とコストのバランスを考慮して決定します。アクセス数の増加に対応できるスケーラビリティも、将来を見据えて検討しておくとよいでしょう。
CMSの選定
CMS(コンテンツ管理システム)は、HTMLやCSSの専門知識がなくてもコンテンツを更新できる仕組みを提供します。WordPressが広く使われていますが、セキュリティや機能要件に応じて他の選択肢も検討します。
CMSの選定時には、コンテンツの更新しやすさ、SEO対策のしやすさ、セキュリティ、拡張性などを総合的に評価します。運用フェーズでの使い勝手を考慮して選ぶことが大切です。
モニタリング環境の構築
サイト構築と並行して、効果測定のためのモニタリング環境も整備します。「お問い合わせ数」「キーワードの検索順位」「指名検索数」「コンテンツ制作本数」など、見るべき指標をあらかじめ定義し、それを計測できる仕組みを構築します。
Google Search ConsoleやGoogle Analyticsなど、大手プラットフォーマーが提供する無料ツールを活用することで、基本的な分析環境は整えられます。
オウンドメディア立ち上げに必要な体制
オウンドメディアの成功は、サイトの質やコンテンツの量だけでなく、運用体制の構築にも大きく左右されます。ここでは、必要な人材と役割分担、体制構築のポイント、外注と内製の使い分けについて解説します。
必要な人材と役割分担
オウンドメディアを運用する場合、以下のような役割を担える人材を選定する必要があります。全ての役割を個別の担当者で埋める必要はなく、小規模な場合は複数の役割を兼任することもあります。
統括責任者
オウンドメディア全体の方向性を決定し、社内の関係部署とコミュニケーションを行う役割です。経営層や他部門との調整、予算管理、成果報告などを担います。オウンドメディアの目的やKGIを社内に浸透させ、組織的なサポートを取り付けることも重要な仕事です。
ディレクター
コンテンツの企画・制作を取りまとめる役割です。キーワード設計、コンテンツカレンダーの管理、ライターへの指示出し、品質管理などを担当します。編集者としての視点と、マーケティング的な視点の両方が求められます。
ライター
実際にコンテンツを執筆する役割です。自社の専門性を活かしたコンテンツを作成するために、社内の知見を持った人材が担当するケースと、外部ライターに委託するケースがあります。どちらの場合も、読者視点でユーザーニーズに応えるコンテンツを作る姿勢が求められます。
デザイナー
サイトのデザインや、記事内のビジュアル素材(図解、イラストなど)を作成する役割です。見やすく、ブランドイメージに沿ったデザインを維持することで、メディアの信頼性向上に貢献します。
マーケター(分析担当)
数値のモニタリングと分析、改善施策の立案を担う役割です。SEOの知識に加え、データを読み解く力が求められます。KPIの達成状況を定期的にチェックし、成果につなげるためのアクションを提案します。
社内体制構築のポイント
オウンドメディアの運用体制を構築する際に、いくつか重要なポイントがあります。
専任体制を目指す
「最初は予算も限られているからミニマムスタートで」という考えから、メインの業務を持つメンバーに兼務させるケースがありますが、これがオウンドメディア運用が頓挫する原因になることがあります。オウンドメディアにまつわる業務は、片手間で対応するには難しく、定常的に発生するものが多いためです。
特に立ち上げ初期は、リソースを集中的に投下すべきフェーズです。可能であれば、専任でオウンドメディアの運用に取り組めるチームを編成することをお勧めします。
素人でも成果を出せる仕組みづくり
オウンドメディアの立ち上げにあたって、「専門家がいないから始められない」と考える企業も多いですが、適切な仕組みがあれば、未経験のメンバーでも成果を出せる編集部を作ることは可能です。
弊社の経験では、以下のような取り組みが効果的でした。
まず、情報発信の責任を最優先にすることです。誤った情報は読者に不利益を与え、企業ブランドに計り知れないダメージを与えます。成果追求の前に「嘘や誤情報を絶対に出さない」という原則を全メンバーに徹底させることが、信頼されるメディアの基盤となります。
次に、初期は基礎に集中させることです。経験の浅いメンバーが数値データを見ると、PVの上下に一喜一憂し、表面的な改善に躍起になりがちです。最初の数ヶ月は、執筆力や情報整理、読者視点といった基礎の習得に集中させることで、その後の成長の土台が形成されます。
独自性のあるコンテンツを生み出す体制づくり
競合との差別化を図るためには、自社ならではの独自性のあるコンテンツを生み出す体制が重要です。
ある飲料メーカーでは、オウンドメディア立ち上げ時にSEO専門ライターではなく、日常的に対象製品を楽しむ愛好家をライターとして起用しました。嗜好品には決まった正解がないため、その人の色や考え方、主張が盛り込まれている方がメディアらしさが出ると考えたためです。執筆前の構成案作成は外部チームが担当し、同社の監修を通じて構成や主張の方向性を確認。これにより、初稿段階から品質担保された記事制作を可能にしました。
結果として、このメディアは1年で月間8万UUを達成。愛好家による深みのある記事制作が、他社では真似できない独自性のあるコンテンツ創出につながりました。
このように、SEOライターではなく対象領域に精通した人材や愛好家をアサインすることで、読み手の共感を得る自然な語りを実現できるケースがあります。
マニュアルの整備
立ち上げ段階から、運用マニュアルの作成を進めておくことが重要です。マニュアルがあることで、メディア運営が属人化しないメリットがあります。また、新しいメンバーが加わった際にも、スムーズに業務に入ることができます。
コンテンツ制作のフロー、品質基準、SEOのチェックポイント、各種ツールの使い方など、運用に必要な情報をドキュメント化しておきましょう。
社内理解の醸成
オウンドメディアは中長期的な取り組みです。立ち上げ当初は多くのリソースがかかるうえに、直接的な成果はあまり期待できないため、社内の理解が得られないこともあります。
メディア開設前に、オウンドメディアの特徴や運用の意義、継続的かつ長期的な取り組みが必要であることを説明し、社内の理解を深めておくことが求められます。経営層のコミットメントを得ておくことも、長期的な運用継続には不可欠です。
自走する組織づくり
外部の専門家に依存せず、社内で持続的に運用できる体制を整えることが、長期的な成功には欠かせません。
自走する組織づくりには、いくつかのポイントがあります。
まず、共通の目標と判断軸を確立することです。オウンドメディアの明確な目的(KGI)と判断基準をチーム全体で共有します。
次に、成功体験を積み重ねることです。特に初期段階では、小さな成功でもチームで共有し、モチベーションを高めます。検索順位が上がった、問い合わせが発生した、といった変化を見逃さず、チーム全体で喜ぶ文化を作ります。
そして、段階的に自律性を向上させることです。初めは手厚いサポートと具体的な指示を行い、成果が出始めたら徐々に「確認」へとコミュニケーションをシフトしていきます。
外注と内製の使い分け
オウンドメディアの運用において、全てを社内で完結させる必要はありません。外部パートナーを活用することで、専門性の高い領域をカバーしたり、リソース不足を補ったりすることができます。
外注を検討すべき領域
戦略設計は、オウンドメディアの成否を左右する重要な領域です。社内にノウハウがない場合は、専門家の知見を借りることで、遠回りを避けられます。
サイト構築は、技術的な専門性が求められる領域です。デザインやコーディング、CMS構築などは、制作会社やフリーランスに依頼することが一般的です。
コンテンツ制作は、量産が求められるフェーズでは、外部ライターの活用が効率的です。ただし、品質管理は社内で行う必要があります。
SEO対策は、専門的な知識と継続的な改善が必要な領域です。社内に専門人材がいない場合は、コンサルティング会社やSEO専門家の支援を受けることを検討します。
内製で持つべき領域
編集方針の決定は、メディアの方向性を決める重要な役割です。自社のブランドや専門性を体現する部分は、社内で主導権を持つべきです。
品質管理も、外部に丸投げせず、社内でチェック体制を持つことが重要です。公開前の確認プロセスを設けることで、ブランドを毀損するリスクを防ぎます。
専門知識の提供は、自社ならではの視点や経験を発信するために必要です。外部ライターが執筆する場合でも、社内の専門家が監修したり、情報を提供したりする体制を整えます。
外注時の注意点
「安いから外注する」という発想は避けるべきです。コンテンツの質は、オウンドメディアの成功を左右する要です。質の高くないコンテンツを量産しても、成果にはつながりません。
外部パートナーを選ぶ際は、実績を確認することが重要です。どのようなプロセスで、どのような課題を解決してきたのか、何を得意分野としているのかを確認します。また、外部パートナーがコンテンツ制作の際に何を重要と捉えているかも、判断材料になります。
オウンドメディア立ち上げにかかる費用
オウンドメディアの立ち上げと運用には、一定の投資が必要です。ここでは、構築費と運用費の相場、そして費用対効果の考え方について解説します。
構築費の相場と内訳
オウンドメディアを外注して立ち上げる場合、構築費は一般的に数百万円程度かかると言われています。依頼する範囲や工程によって費用は大きく変わるため、自社で対応できる業務と外部に依頼する業務を明確にしてから見積もりを取ることをお勧めします。
構築費に含まれる項目
コミュニケーション設計では、ターゲットとの接点をどのように設計するか、どのようなコンテンツでどのような態度変容を促すかを定義します。
戦略設計では、目的の明確化、KGI・KPIの設定、キーワード戦略の策定などを行います。
デザインでは、サイトの見た目、レイアウト、ビジュアルアイデンティティを決定します。トップページ、記事ページ、カテゴリページなど、必要なページのデザインを作成します。
コーディングでは、デザインを実際のWebサイトとして構築します。CMSのカスタマイズや、必要な機能の実装も含まれます。
費用を抑える方法
WordPressなどの既存CMSを活用することで、ゼロから開発するよりもコストを抑えられます。テンプレートを活用すれば、デザイン費用も削減可能です。
ただし、初期費用を抑えることを優先するあまり、運用しにくいサイトになってしまっては本末転倒です。運用フェーズでの使い勝手も考慮して判断しましょう。
運用費の相場と内訳
オウンドメディアの運用には、継続的な費用がかかります。コンテンツ制作を外注する場合は、月々数十万円から百万円以上の運用費を見込む必要があります。
運用費に含まれる項目
サーバー・ドメイン費用は、サイトを維持するための固定費です。規模や要件によって異なりますが、月々数千円から数万円程度が一般的です。
コンテンツ制作費は、記事の企画、執筆、編集、デザインにかかる費用です。内製する場合は人件費、外注する場合は制作費として発生します。記事の本数と単価によって変動します。
分析・改善費用は、SEO対策やサイト改善にかかる費用です。専門人材の人件費、またはコンサルティング費用として発生します。
その他、写真・イラスト素材の購入費、各種ツールの利用料なども運用費に含まれます。
年間費用の目安
構築費と運用費を合わせると、初年度は相応の投資が必要になるケースも少なくありません。予算計画を立てる際は、初年度だけでなく、中長期的な投資を見込んでおくことが重要です。
オウンドメディアは、成果が出るまでに時間がかかる施策です。短期的なROI(投資対効果)だけで判断すると、成果が出る前に撤退してしまう可能性があります。中長期的な視点で予算を確保することが大切です。
費用対効果の考え方
オウンドメディアの費用対効果を評価する際は、いくつかの視点を持っておく必要があります。
短期的な評価は難しい
オウンドメディアは、成果が出るまでに半年から一年以上かかることが一般的です。特に検索エンジンをタッチポイントとする場合、コンテンツが評価されるまでに一定の時間が必要です。立ち上げ直後に費用対効果を判断すると、ネガティブな評価になりがちです。
長期的な視点での評価
オウンドメディアの価値は、継続的な運用によって蓄積されます。質の高いコンテンツを積み重ねることで、メディア自体が資産となり、長期的に見込み客を集客し続けることができます。
広告費との比較で考えると、広告は出稿を止めれば集客も止まりますが、オウンドメディアは公開したコンテンツが継続的に集客に貢献します。初期投資は大きくても、長期的に見れば費用対効果が高くなる可能性があります。
投資判断のポイント
投資判断を行う際は、以下の点を考慮します。
目的が事業課題の解決に紐づいているか。リード獲得が目的であれば、獲得したリードからの受注率や受注単価を加味して、投資回収の見込みを立てます。
成果が出るまでの期間を許容できるか。半年から一年以上、成果が見えにくい期間が続く可能性があります。その間、投資を継続できる体制があるかを確認します。
他のマーケティング施策との比較で優位性があるか。広告、展示会、テレマーケティングなど、他の施策と比較して、オウンドメディアが自社に適しているかを検討します。
オウンドメディア立ち上げで失敗しないためのポイント
オウンドメディアは、正しい戦略に基づいて、運用と継続を繰り返せば、成果は出てきます。成果に至らないケースは、戦略の立て方や運用方法が間違っている、もしくは継続ができていない場合がほとんどです。ここでは、よくある失敗パターンと、成功に導くためのポイントを解説します。
よくある失敗パターンと原因
オウンドメディアの立ち上げにおいて、陥りやすい失敗パターンがあります。事前に把握しておくことで、同じ轍を踏むリスクを減らすことができます。
目的が曖昧なまま始めてしまう
「競合がやっているから」「流行っているから」といった理由で、目的が曖昧なままスタートするケースは少なくありません。オウンドメディアの立ち上げ自体を目的にしてしまうと、途中で「何のためにコンテンツを作り続けているのか」が分からなくなり、運用が形骸化してしまいます。
対策として、立ち上げ前に「何のためにオウンドメディアを運用するのか」を明確にし、チーム全体で共有することが重要です。
短期的な成果を期待してしまう
オウンドメディアは中長期的な施策です。特に検索エンジン経由の集客を主軸にする場合、成果が出始めるまでには最低でも半年程度はかかります。「リリース後すぐに成果が出る」という期待を持っていると、早期に「効果がない」と判断してしまいがちです。
対策として、関係者全員が「成果が出るまでに時間がかかる施策である」という認識を持つことが大切です。立ち上げ期のKPIは、成果指標ではなく行動指標(コンテンツ公開本数など)に設定することも有効です。
運用体制が整っていない
「担当者が通常業務と兼務しており、コンテンツ制作に時間を割けない」「記事の品質を担保できる編集者がいない」など、運用体制の不備も失敗の大きな要因です。リソースが足りないと、コンテンツの更新頻度が下がり、品質も低下します。
対策として、立ち上げ前に必要なリソースを見積もり、体制を整えておくことが重要です。全てを社内で賄えない場合は、外部パートナーの活用も検討します。
ターゲット設定が曖昧
「万人ウケを狙ったら、結局誰の心にも響かなかった」という失敗例は多いです。ペルソナが曖昧なままコンテンツを作ると、誰に何を伝えたいのか分からないメディアになってしまいます。
対策として、具体的なペルソナを設定し、そのペルソナが抱える課題や求める情報に焦点を当てたコンテンツを制作します。
コンテンツが「書きたいこと」になっている
ユーザーが何を求めているかを無視し、企業が伝えたいことだけを発信する「自己満足」なコンテンツでは、読者の共感は得られません。情報を詰め込むだけではコミュニケーションは生まれません。
対策として、常に「読者は何を知りたいのか」という視点に立ち、ユーザーニーズに応えるコンテンツを制作します。作り手の「伝えたい」ではなく、読者の「知りたい」を起点に設計することが大切です。
作って終わりになっている
コンテンツは公開してからがスタートです。アクセス解析や検索順位のチェックを行わず、公開したまま放置していては、メディアが成長することはありません。検索エンジンは日々順位を変動させる仕組みを採用しており、ユーザーのニーズも変化していきます。
対策として、定期的な効果測定と改善のサイクルを回す体制を構築します。公開したコンテンツのパフォーマンスを確認し、必要に応じてリライトや構成変更を行います。
成功するオウンドメディアに共通する特徴
逆に、成功しているオウンドメディアには、いくつかの共通点があります。
目的と成果が明確に定義されている
成功しているオウンドメディアは、「何のために運用しているのか」が明確です。目的から逆算して成果指標を設定し、その達成度合いを定量的に把握しています。KGIを頂点としたKPIツリーを設計し、適切な段階を踏んで目的達成を目指しています。
目的に沿った運用がされている
定めた目的や成果に対して、正しい運用がなされています。目的や成果から逆算して戦略を描き、それに基づいて実行しています。また、定期的に振り返りを行い、達成・未達の要因分析をした上で、次のアクションを決めています。
継続と改善を行い続けている
成功事例として挙げられるオウンドメディアの多くは、数年以上運用を継続しています。短期的な成果に一喜一憂せず、本来の運用目的を見据えながら、改善を繰り返しています。最新の検索エンジンの傾向やユーザー動向にキャッチアップし、それをコンテンツに反映させ続けています。
小さな成功を積み重ね、組織を巻き込んでいる
成功しているオウンドメディアの多くは、初期段階で「証拠づくり」に集中しています。理論だけでなく、実際の成果を示すことで社内の理解を得ていくアプローチです。
ある企業では、健康情報メディアを運営していましたが、1年間にわたり多額の予算を投じても月間8万UUという低迷が続いていました。経営陣からは費用対効果の観点から改善を求められ、メディアの存続自体が危ぶまれる状況でした。
転機となったのは、限られた予算と期間の中で「まず証拠を作る」という戦略への転換でした。過去に実績のある協力者に依頼し、各自1本ずつ高品質なコンテンツを制作。不確実性の高い状況で確実に成果を出すためには、コンテンツの品質が極めて重要であり、信頼関係のある優秀なライターへの集中投資が最も合理的な選択だったのです。
結果として、2ヶ月目には前月比10%のグロース、3ヶ月目にもさらに10%のグロースという順調な伸びを実現。この「証拠」があったことで、関係者との合意形成が進み、全体予算や組織体制をグロースに向けて再構築できるようになりました。最終的には、8万UUから300万UUへの40倍成長を2年で実現しています。
このプロジェクトが成功した要因は、最初の証拠づくりの段階で確実に成果を出せたことでした。質の高いコンテンツによる「点」を作れたことが、その後の線、面への展開を可能にした成功の分岐点だったのです。
このように、小さく成功して実績で信頼を得ることで、組織全体への展開が加速します。成果が見える形で示されることで、経営層や他部門の抵抗感が減少し、組織全体の改革にもつながります。
立ち上げ後の運用で大切なこと
オウンドメディアは、立ち上げがゴールではありません。立ち上げ後の運用フェーズこそが、成果を出すための本番です。
小さな成功体験を積み重ねる
特に立ち上げ初期は、大きな成果を出すのは難しいです。しかし、小さな変化を見逃さず、チームで共有することが重要です。検索順位が少し上がった、セッション数が増えた、初めて問い合わせが発生した。これらの小さな成功体験が、チームのモチベーションを維持し、継続的な運用を支えます。
柔軟性を持った運用体制を構築する
詳細な行動計画を立てると、それに従って動く必要がある人の数が増え、計画変更のハードルが高くなります。データを振り返っても、計画変更ができなければ改善に活かせません。
対策として、運用体制やリソース、予算を把握した上で、「変えられること」と「変えられないこと」を整理します。定数と変数を分けて、変数=柔軟に対応できる余白として定義することで、目標に真摯に向き合える組織土壌が形成されます。
正しい情報発信の責任を果たす
企業が情報発信をする以上、正しい情報を正しく発信することは絶対に忘れてはなりません。誤った情報は読者に不利益を与え、企業ブランドに計り知れないダメージを与えます。
事実確認の厳格化、推測と事実の区別、必要に応じた専門家の確認など、品質を担保するためのプロセスを設けることが重要です。成果追求の前に、この基本原則を徹底することで、長期的に信頼されるメディアの基盤が築けます。
等身大の発信を心がける
タイトルを盛りすぎて、読者の期待値を不釣り合いに高めてしまうと、内容が良くても「普通」と感じられてしまいます。実績がないのに実績があるように見せたり、誇張した表現でカバーしようとしても、後々ギャップで苦しむことになります。
「言っていることと、やっていることを一致させる」ことが重要です。コンテンツの実態をそのままに、適切な言葉で表現することで、読者との信頼関係が成立します。
CVR改善にも注力する
オウンドメディアの成果を最大化するためには、集客だけでなくコンバージョン率(CVR)の改善にも目を向ける必要があります。
ある企業では、検索上位を獲得した記事について、記事内CTAやUIの設計・改修を徹底しました。ユーザーの状況・動機・ニーズに応じてCTA配置や訴求内容をチューニング。CTAクリックが増えると、お問い合わせフォームでの離脱が課題化したため、フォーム項目の簡略化やUI見直しなどEFO(エントリーフォーム最適化)施策も実施しました。
キーワード獲得だけでなくCVR改善も徹底した結果、立ち上げ半年で月数十件、1年後には月100件を超えるお問い合わせが生まれることとなりました。集客とCVR改善の両輪で取り組むことで、より大きな成果につながります。
まとめ
オウンドメディアの立ち上げは、計画・準備・運用の3段階を経て進めていきます。成功の鍵は、立ち上げ前の戦略設計と、立ち上げ後の継続的な運用改善にあります。
本記事のポイントを整理します。
- 立ち上げ前に「やるべきかどうか」を冷静に判断する。特にBtoB企業では、事業特性との適合性を見極めることが重要
- 目的・ミッションを明確に定義し、それを判断基準として戦略を設計する
- 専任体制の構築を目指し、継続的に運用できる組織を作る
- 短期的な成果を期待せず、中長期的な視点で投資と運用を継続する
- 公開して終わりではなく、データに基づく改善サイクルを回し続ける
- 小さな成功を積み重ね、組織全体を巻き込む形で展開していく
- 集客だけでなく、CVR改善にも注力して成果を最大化する
オウンドメディアは、正しい戦略に基づいて継続的に運用すれば、事業に大きく貢献する可能性を持っています。実際に、立ち上げから1年で月100件を超えるリードを創出した事例や、2年で40倍の成長を実現した事例もあります。一方で、全ての企業に適しているわけではなく、相応の投資とリソースが必要な施策でもあります。
自社の事業特性、マーケティング課題、投資可能なリソースを総合的に判断した上で、オウンドメディアの立ち上げを検討してみてください。立ち上げを決断した際には、本記事で解説した手順とポイントを参考に、成果につながるメディア構築を進めていただければ幸いです。
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