
デジタルマーケティング戦略の立て方|実践手順を解説
デジタル技術の進化により、企業のマーケティング活動は大きく変化しました。Webサイト、SNS、メール、デジタル広告など、顧客との接点は多様化し、データを活用した精度の高いアプローチが可能になっています。
一方で、以下のような声も増えています。
- デジタルマーケティングに取り組んでいるが、思うような成果が出ない
- 施策は実行しているが、戦略全体の設計ができていない
- どの施策を優先すべきか、判断基準が分からない
そこで本記事では、デジタルマーケティング戦略の立て方から実践手順まで、6つのステップで体系的に解説します。BtoB・BtoCの違いを踏まえた施策選定、KPI設計、組織体制の構築まで、成果を出すためのポイントをお伝えします。
目次
デジタルマーケティング戦略とは
デジタルマーケティング戦略を効果的に立案するためには、まず基本的な概念と、なぜ戦略が重要なのかを理解することが大切です。ここでは、デジタルマーケティングの定義から、戦略立案の必要性、BtoBとBtoCの違いまでを解説します。
デジタルマーケティングの定義
デジタルマーケティングとは、インターネットやAI、デジタル技術を活用して、商品やサービスの認知向上、集客、販売促進を行うマーケティング活動全般を指します。
具体的には、以下のような活動が含まれます。
| 領域 | 具体的な活動例 |
|---|---|
| 集客 | SEO、リスティング広告、SNS広告、ディスプレイ広告 |
| 接客 | Webサイト最適化、コンテンツマーケティング、動画配信 |
| 育成 | メールマーケティング、MA(マーケティングオートメーション) |
| 分析 | アクセス解析、顧客データ分析、効果測定 |
従来のマーケティングとの大きな違いは、顧客の行動データを取得・分析し、一人ひとりに最適化されたコミュニケーションが可能になった点です。
複数のデジタルチャネルを連携させ、顧客データ分析に基づいたアプローチを行うことで、顧客体験の最適化と売上拡大を同時に実現できます。
戦略がなぜ重要なのか
デジタルマーケティングにおいて、戦略なき施策は「穴の開いたバケツに水を注ぐ」ようなものです。どれだけ多くの施策を実行しても、全体の設計がなければ成果には繋がりません。
戦略が重要な理由は、以下の3点に集約されます。
限られたリソースの最適配分
企業のマーケティング予算や人員には限りがあります。戦略なしに「流行っているから」「競合がやっているから」という理由で施策を選択すると、リソースが分散し、どの施策も中途半端な結果に終わります。戦略があれば、最も効果が見込める領域にリソースを集中できます。
一貫性のある顧客体験の提供
顧客はWebサイト、SNS、メール、広告など、複数のチャネルで企業と接点を持ちます。各チャネルがバラバラのメッセージを発信していては、顧客は混乱します。戦略に基づいて各施策を設計することで、どのチャネルでも一貫した顧客体験を提供できます。
PDCAサイクルの基盤
戦略があれば、「何を目指しているのか」「どの施策がどの目標に貢献しているのか」が明確になります。これにより、施策の効果検証と改善のサイクルを回せるようになります。戦略なしでは、成功も失敗も「なぜそうなったのか」が分からず、次のアクションに繋がりません。
BtoBとBtoCの違い
デジタルマーケティング戦略は、BtoB(企業間取引)とBtoC(企業対消費者取引)で大きく異なります。この違いを理解せずに戦略を立てると、的外れな施策に陥る可能性があります。
| 項目 | BtoB | BtoC |
|---|---|---|
| 意思決定者 | 複数人(決裁者・推進者・利用者) | 個人(本人のみ) |
| 検討期間 | 長期(数ヶ月〜1年以上) | 短期(即日〜数日) |
| 判断基準 | 論理的・合理的(ROI、課題解決) | 感情的・直感的(好み、共感) |
| 購買単価 | 高額(数十万〜数千万円) | 比較的低額(数百〜数万円) |
| ターゲット数 | 限定的 | 大規模 |
BtoBの場合、購買決定に複数の担当者が関与し、検討期間も長期化する傾向があります。そのため、一度の接点で購入に至ることは稀です。
リード獲得からナーチャリング(見込み客の育成)、商談、受注までの一連のプロセスを設計し、各段階で適切なコミュニケーションを取ることが成果創出の鍵となります。
また、BtoBではマーケティング部門と営業部門の連携が不可欠です。両者が共通の目標を持ち、リードの質と量を最適化していく必要があります。
戦略立案の6つのステップ
デジタルマーケティング戦略は、以下の6つのステップで立案します。この順序を守ることで、論理的かつ実行可能な戦略を構築できます。
現状分析と課題の明確化
戦略立案の第一歩は、自社の現状を正確に把握することです。現状分析なしに戦略を立てることは、地図なしに目的地を目指すようなものです。
外部環境の分析
市場の動向、競合の状況、顧客ニーズの変化を把握します。自社の事業領域でどのような変化が起きているのか、競合がどのような施策を展開しているのかを調査します。
内部環境の分析
自社の強み・弱み、保有するリソース(予算・人員・技術)、現在のマーケティング施策の状況を整理します。特に、現状のマーケティング施策がどの程度成果を出しているのかを定量的に把握することが重要です。
課題の構造化
現状分析の結果から、解決すべき課題を特定します。課題は「リード獲得数が少ない」「リードの質が低い」「Webサイトからのコンバージョン率が低い」など、具体的かつ測定可能な形で言語化します。
課題が複数ある場合は、優先順位をつけます。すべての課題を同時に解決しようとすると、リソースが分散して成果が出にくくなります。
ターゲット設定とペルソナ作成
誰に対してマーケティング活動を行うのか、ターゲットを明確にします。「30代男性会社員」といった曖昧なターゲット設定では、効果的なコミュニケーションは設計できません。
セグメンテーションとターゲティング
市場を属性や行動で分類(セグメンテーション)し、自社が注力すべき層を選定(ターゲティング)します。BtoBの場合は、業種、企業規模、役職、課題などで分類します。
ペルソナの作成
ターゲットとなる架空の人物像を、具体的に描きます。ペルソナには以下の要素を含めます。
- 基本属性(年齢、職種、役職、企業規模)
- 課題・悩み(業務上の課題、達成したい目標)
- 情報収集行動(普段どのように情報を集めているか)
- 購買行動(どのような基準で意思決定するか)
ペルソナは想像で作るのではなく、既存顧客へのインタビューやCRM/SFAのデータ分析を通じて、事実に基づいて作成することが重要です。
カスタマージャーニーの設計
カスタマージャーニーとは、顧客が自社の商品・サービスを認知してから購入に至るまでの過程を、行動や心理的変化の観点から可視化したものです。
カスタマージャーニーマップの構成要素
横軸に購買心理の段階(認知→興味・関心→比較・検討→購入)、縦軸に以下の項目を設定します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 行動 | その段階で顧客がとる行動 |
| 接点 | 顧客と企業が接触するチャネル |
| 思考 | 顧客が考えていること、疑問点 |
| 課題 | 顧客が感じている不安や障壁 |
| 対応策 | 企業として取るべきアクション |
設計のポイント
カスタマージャーニーを設計する際は、「ユーザーにニーズのある情報は何か」「次の態度に変容するためのトリガーは何か」「ボトルネックとなっているものは何か」を整理します。
特にBtoBでは、検討段階に応じた段階的なアプローチ(階段設計)が有効です。いきなり商談を求めるのではなく、資料ダウンロード、セミナー参加、無料相談など、顧客の検討度合いに応じたオファーを用意します。
施策の選定と優先順位づけ
カスタマージャーニーで整理した各段階に対して、どの施策を実行するかを選定します。ここで重要なのは、「施策ありき」で考えないことです。
施策選定の考え方
施策は目的達成のための手段です。「SEOが流行っているから」「競合がSNSをやっているから」という理由で施策を選ぶのではなく、カスタマージャーニーで特定した課題を解決するために最適な施策は何かを考えます。
優先順位づけの基準
限られたリソースの中で最大の成果を出すために、施策の優先順位を決めます。判断基準は以下の3点です。
- 効果の大きさ: その施策がKGI達成にどれだけ貢献するか
- 実行の難易度: 必要なリソース(予算・人員・時間)はどの程度か
- 即効性: 成果が出るまでにどのくらいの期間がかかるか
一般的に、効果が大きく、難易度が低く、即効性のある施策から優先的に着手します。ただし、短期的な施策だけに偏ると持続的な成長が難しくなるため、中長期的な施策もバランスよく組み込むことが大切です。
事例に学ぶ施策の優先順位づけ
ある業務支援系クラウドサービス企業では、デジタルマーケティングに本格的に取り組もうとした際、何から始めるべきか判断に悩んでいました。リファラル依存の営業体制から脱却し、新規顧客獲得を強化する必要があったものの、社内に専門知識を持つ人材がおらず、施策の優先順位が定まらない状態が続いていたのです。
そこで、まず「成果ファースト」の視点で全体戦略を再設計しました。ターゲットの再定義、カスタマージャーニーの作成、各チャネルの課題整理を行った上で、短期で成果を出すために最も効果的な施策は何かを検討しました。
その結果、全チャネルの受け皿となるサービスサイトの改修から着手することに決定しました。理由は、サービスサイトが成果へのインパクトが大きく、かつ他の施策を実行してもサービスサイトでリードの取りこぼしが起きてしまうと、すべての施策効果が減殺されてしまうためです。
サービスサイトの改修後は、リードの母数を最大化するためのデジタル広告やコンテンツSEOに着手する方針としました。この「受け皿の最適化→集客施策」という順序を守ることで、限られたリソースの中でも短期間で成果を出すことができました。
この事例から学べるのは、施策の優先順位を決める際には「他の施策の効果を最大化する基盤施策は何か」という視点が重要だということです。
KGI・KPIの設定
戦略の成否を判断するための指標を設定します。指標なしでは、施策が成功しているのか失敗しているのかを判断できません。
KGIとKPIの違い
- KGI(Key Goal Indicator): 最終目標達成指標。例:年間売上10億円、年間リード獲得数1,500件
- KPI(Key Performance Indicator): KGI達成に向けた中間指標。例:月間問い合わせ数、商談化率、コンバージョン率
KPIツリーの構築
KGIを頂点として、それを達成するために必要な要素を分解し、ツリー状に可視化します。
例えば、KGIが「月間受注数50件」の場合、以下のように分解します。
月間受注数50件
├── 商談数 × 受注率
│ ├── 商談数100件
│ └── 受注率50%
├── リード数 × 商談化率
│ ├── リード数500件
│ └── 商談化率20%
└── Webサイト訪問数 × CVR
├── 訪問数10,000
└── CVR5%
SMARTな指標設定
KPIは以下の5つの要素を満たすように設定します。
- S(Specific): 明確であること
- M(Measurable): 測定可能であること
- A(Achievable): 達成可能であること
- R(Relevant): 目標と関連性があること
- T(Time-bound): 期限があること
「リード数を増やす」ではなく「3ヶ月後までにリード数を月間500件にする」というように、具体的に設定します。
体制構築と並行した施策実行の重要性
先ほど紹介した業務支援系クラウドサービス企業では、戦略と施策が決定した後も、それを実行するための体制やリソースが不足しているという課題がありました。
この企業では、施策実行に必要なスキルセットを棚卸しし、業務委託メンバーを迅速にアサインすることで、スピーディーに体制を構築しました。ベンチャー企業特有の「やるべきことが多く、優先順位の変更が頻繁に発生する」という状況を前提に、柔軟に対応できる体制を整えたのです。
結果として、マーケティングのノウハウがまったくない状態から、ターゲットの言語化と見直しを実施し、訴求内容や実行施策を決定。売れ続ける仕組みを早期に構築できたことで、約1年で国内市場No.1のシェアを獲得するに至りました。
この事例が示すのは、戦略立案だけでなく「実行できる体制の構築」も戦略の一部として捉えることの重要性です。どれだけ優れた戦略も、実行できなければ意味がありません。
主要な施策と選び方
デジタルマーケティングには多様な施策がありますが、大きく「集客」「接客」「ナーチャリング」の3つに分類できます。それぞれの特性を理解し、自社の課題に合った施策を選択することが重要です。
集客施策(SEO・広告・SNS)
見込み客との最初の接点を作る施策です。自社のWebサイトやコンテンツに、いかに多くのターゲットユーザーを誘導するかがポイントになります。
SEO(検索エンジン最適化)
検索エンジンで上位表示を実現し、オーガニックな集客を増やす施策です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メリット | 一度上位表示すれば継続的に集客できる、広告費がかからない |
| デメリット | 成果が出るまで半年〜1年程度かかる、継続的な運用が必要 |
| 適している場合 | 中長期的な集客基盤を構築したい、広告費を抑えたい |
SEOでは、キーワード設計が重要です。自社サービスを検討しているユーザーが検索するであろうキーワードを特定し、そのキーワードでの上位表示を目指します。
リスティング広告
検索キーワードに連動して表示される広告です。比較検討段階のユーザーにアプローチでき、受注に近いリードを獲得しやすい施策です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メリット | 即効性がある、ターゲットを絞った配信が可能 |
| デメリット | 広告費がかかり続ける、競合が多いとCPAが高騰する |
| 適している場合 | 短期間で成果を出したい、検索需要のある商材 |
SNS広告
各SNSプラットフォームに配信する広告です。ユーザーの属性や興味関心に基づいたターゲティングが可能です。
BtoBの場合、ビジネスパーソンが多く利用しているLinkedInや、Meta広告(Facebook/Instagram)が効果的です。
接客施策(Webサイト・コンテンツ)
集客した見込み客を、問い合わせや資料請求などのコンバージョンに導く施策です。
Webサイト最適化
Webサイトは、デジタルマーケティングのすべての施策の基盤です。いくら集客しても、Webサイトの使い勝手が悪ければコンバージョンには繋がりません。
最適化のポイントは以下の通りです。
- ユーザーの目的に合った導線設計
- 分かりやすいCTA(行動喚起)の配置
- ページ読み込み速度の改善
- スマートフォン対応
コンテンツマーケティング
見込み客にとって価値のあるコンテンツを提供し、信頼関係を構築する施策です。記事、ホワイトペーパー、動画、ウェビナーなど、様々な形式があります。
コンテンツは「資産」にも「負債」にもなりえます。ビジネスの目的に合致し、目的達成に貢献できる品質があって初めて価値あるコンテンツとなります。
単にPVを稼ぐだけのコンテンツを量産しても、リード獲得や売上には繋がりません。「どのようなユーザーに」「どのような行動を取ってもらうか」を明確にした上で、コンテンツを設計することが重要です。
ナーチャリング施策(MA・メール)
獲得したリードを育成し、購買確度を高める施策です。特にBtoBでは、リード獲得から受注までの期間が長いため、ナーチャリングが重要な役割を果たします。
MA(マーケティングオートメーション)
リード管理、スコアリング、メール配信自動化などの機能を持つツールです。見込み客の行動データを収集・分析し、検討度合いに応じたアプローチを自動化できます。
MAを活用することで、以下のようなことが可能になります。
- リードの属性や行動履歴に基づいたセグメント分け
- 検討段階に応じた自動メール配信
- 購買確度の高いホットリードの抽出
- 営業部門への適切なタイミングでのトスアップ
メールマーケティング
登録した見込み客に対して、定期的に情報を配信する施策です。同じ内容を一斉送信するのではなく、顧客属性や興味関心に応じてセグメント配信することが効果的です。
ナーチャリングでは、見込み客が持つ「本当に効果があるのか」という不安を解消することが重要です。同業種や類似課題を持つ企業の導入事例を提供したり、専門知識を提供するセミナーを開催したりすることで、信頼関係を構築します。
成果を出すための実践ポイント
戦略を立てただけでは成果は出ません。戦略を実行し、継続的に改善していくためのポイントを解説します。
データドリブンな改善サイクル
デジタルマーケティングの強みは、施策の効果を数値で測定できることです。この強みを活かし、データに基づいたPDCAサイクルを回すことが成果創出の鍵となります。
効果測定の仕組みづくり
まず、各施策の効果を測定できる環境を整えます。Googleアナリティクスなどのアクセス解析ツールを導入し、コンバージョン計測を正しく設定することが前提条件です。
データ分析の成功は、分析そのものよりも前工程(分析設計、データ収集、データ整備)が整っているかで決まります。「どのデータを」「どのように取得し」「どう判断に使うか」を事前に設計しておくことが重要です。
多角的なデータ分析
月間アクセス数の数字だけでは、施策の改善には繋がりません。前月比や昨年同月比との比較、流入経路別のトラフィック、ページごとのコンバージョン率など、多角的な視点でデータを分析します。
また、データの大きな変動があった場合は、外部環境や競合動向も考慮する必要があります。内的要因だけに捉われると、アクションを誤る危険性があります。
施策の成長率で評価
複数の施策を評価する際、ある時点でのKGIへの貢献度を相対評価するのではなく、施策単体のビフォーアフター、つまり成長率で評価することが適切です。
施策によって効果の出方やタイミングが大きく異なるためです。SEOは即効性がなく初期は結果が見えませんが、継続すれば徐々に右肩上がりになります。一方、広告は配信開始時点で即座に成果が出ます。これらを同じ時点の貢献度で比較すれば、広告が優位に見えてしまい、SEOの長期的価値を見落とす可能性があります。
マーケティングと営業の連携
特にBtoBにおいて、マーケティング部門と営業部門の連携は成果創出の鍵を握ります。マーケティングが獲得したリードが営業を通して受注に繋がったかどうかを確認するために、両者の連携強化が不可欠です。
共通の指標を持つ
マーケティング部門が「リード数」だけを指標とするのではなく、営業部門の「案件化数」も指標として持つことが効果的です。
自部門ではコントロールできない指標を意識させることで、「営業が求めているリードがどのようなものなのか」をコミュニケーションする機会が生まれます。リード数だけを追うのではなく、「案件化できるようなリードを創出するには、どういうマーケティング活動が必要か」を主体的に考えられるようになります。
リードの質を重視する
単にリード数を増やすことではなく、質の高いリード、つまり案件化しやすいリードを創出することがマーケティングの成果です。
リード数という表面的な数字だけで評価していては、本当の課題に気づけません。マーケティング部門が営業との連携を深め、どのようなリードが商談・受注に繋がっているのかを把握することで、施策の最適化が可能になります。
事例に学ぶWebサイト改善の効果
ある業務支援系SaaS企業では、既存サービスの提供実績は豊富でしたが、総合的なDX支援企業としてのポジショニングを強化するため、コーポレートサイトの刷新プロジェクトに取り組みました。
このプロジェクトでは、まず会社としてありたい姿や実現したい世界観と、ユーザーが求めているインサイトを整理しました。その上で、これまで一貫性がなかったサービス訴求の軸を統一し、全体のシナリオを描いてサイト設計を行いました。
具体的には、サービスの紹介ページ、機能紹介ページ、コンテンツ、問い合わせフォーム、Thanksページなど、すべての下層ページでユーザーとのコミュニケーションを見直し、一貫した体験を提供できるよう修正を実施しました。
結果として、リニューアル前後でCV数が200件から300件へと1.5倍に増加しました。特筆すべきは、Webサイトへのセッション数には大きな変化がなかったことです。つまり、集客量を増やさなくても、サイト内のCTA改善や構成へのテコ入れだけでCVRを大幅に改善できたのです。
この事例は、「集客を増やす」ことだけがリード獲得の方法ではないことを示しています。既存の流入をいかに効率よくコンバージョンに繋げるか、という視点も戦略において重要な要素です。
AIとMAの活用と役割分担
AIの進化により、マーケティング活動の効率化と高度化が進んでいます。ただし、「全部AIに任せる」でも「まったく使わない」でもなく、どこまでをAIにやってもらい、どこからを人がやるかを決めることが重要です。
AIに任せるべき領域
以下のような定型的・反復的な作業は、AIやMAに任せることで効率化できます。
- リードのスコアリング
- メール配信のタイミング最適化
- 広告のターゲティングと入札
- 基本的なデータ分析とレポーティング
人が判断すべき領域
一方、以下のような領域は、人の判断が不可欠です。
- 戦略の方向性決定
- ターゲット設定とペルソナ設計
- コンテンツの企画・メッセージ設計
- 顧客との直接コミュニケーション
重要なのは、テクニックではなくコミュニケーションとしてマーケティングを捉えることです。「目の前に人がいたら、どう話すか」という問いを常に持つことで、AIに任せるべき部分と人が判断する部分が見極められるようになります。
戦略実行時の注意点
デジタルマーケティング戦略を実行する際に、押さえておくべき注意点を解説します。
成果が出るまでの期間と心構え
デジタルマーケティングは、施策によって成果が出るまでの期間が大きく異なります。この違いを理解せずに取り組むと、早期に諦めてしまったり、適切な評価ができなかったりします。
施策別の成果が出るまでの期間目安
| 施策 | 期間目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| リスティング広告 | 即日〜数週間 | 即効性があるが、継続的な費用が必要 |
| SNS広告 | 数日〜数週間 | ターゲティング次第で効果が変わる |
| SEO | 6ヶ月〜1年以上 | 時間がかかるが、長期的な資産になる |
| コンテンツマーケティング | 6ヶ月〜1年以上 | 継続的な運用が前提 |
| メールマーケティング | 数週間〜数ヶ月 | リスト構築が前提条件 |
スモールスタートの重要性
いきなり全ての施策に手を出すのではなく、自社の目的や課題、リソースに立ち返り、最も効果が出そうだと考えられる施策に優先順位をつけて、まずは小さな成功体験を積むことが大切です。
小さな成功体験により組織の自信が生まれ、社内からの承認を得ることで、より大きな施策へと展開できるようになります。
組織体制と予算配分の考え方
デジタルマーケティングを成功させるためには、適切な組織体制と予算配分が必要です。
組織体制の構築
デジタルマーケティングには、以下のような役割が必要になります。
- 戦略立案: 全体の方向性を決める
- 施策実行: 各施策の企画・運用を行う
- データ分析: 効果測定と改善提案を行う
- コンテンツ制作: 記事、動画、ホワイトペーパーなどを制作する
すべての役割を社内で賄う必要はありません。自社のコア領域は内製化し、それ以外は外部パートナーを活用するという判断も有効です。
予算配分の考え方
マーケティング予算は、組織の目標に対する各施策の貢献度によって決めるべきです。「コロナ禍だから」といった外部要因で一律に縮小するのではなく、施策の貢献度を明確にし、最適な予算配分に目を向けることが重要です。
予算配分のポイントは以下の通りです。
- 施策の「目的」と「成果指標」を明確にする
- 過去のデータを振り返り、成功のヒントを見つける
- 柔軟に対応できるよう、予算を固めすぎない
- 流行りに流されず、自社の目的達成に最適な施策を選ぶ
外部パートナーの活用判断
デジタルマーケティングには専門的な知識・スキルが必要な領域が多く、すべてを内製化することが難しい場合もあります。外部パートナーの活用を検討する際のポイントを解説します。
外部パートナーを活用すべきケース
- 社内に専門知識・スキルを持った人材がいない
- 短期間で成果を出す必要がある
- 自社の視点だけでは行き詰まっている
- 一時的にリソースが不足している
パートナー選びのポイント
外部パートナーを選ぶ際は、「作業外注」ではなく「中核パートナー」を選ぶ視点が重要です。単発の施策提案に留まる会社と、持続可能な成長基盤を構築する会社では、提供する価値が大きく異なります。
以下の観点でパートナーを評価します。
- どのようなプロセスで、どのような課題を解決してきたのか
- 何を得意分野としているのか
- 自社に対してどのような提案をしてくれるか
- 専門性や信頼性のある情報発信を行っているか
外部パートナーからは、複数の業界での経験を基にした第三者視点のアイディアや知恵を得られます。これにより、自社の考えに縛られず、ユーザーニーズに基づいた施策の検討が可能になります。
外注時の注意点
「安いから外注する」という発想は危険です。特にコンテンツ制作においては、質の低いコンテンツを量産しても成果には繋がりません。
外部パートナーがコンテンツ制作の際に何を重要と捉えているか、ユーザーニーズの深掘りや正しい情報発信のための取り組みを行っているかを確認することが判断材料になります。
まとめ
デジタルマーケティング戦略の立て方と実践手順について解説しました。
戦略立案は以下の6つのステップで進めます。
- 現状分析と課題の明確化
- ターゲット設定とペルソナ作成
- カスタマージャーニーの設計
- 施策の選定と優先順位づけ
- KGI・KPIの設定
- 実行と効果検証
重要なのは、「施策ありき」で考えないことです。自社の課題は何か、誰にどのような価値を届けるのかを明確にした上で、それを実現するための手段として施策を選択します。
また、戦略は一度立てたら終わりではありません。データに基づいたPDCAサイクルを回し、継続的に改善していくことが成果創出の鍵となります。
デジタルマーケティングは、正しい戦略と継続的な改善があれば、必ず成果に繋がる領域です。本記事の内容を参考に、自社に合った戦略を構築し、実践に活かしていただければ幸いです。
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