
BtoBのWebマーケティングとは?戦略から施策まで体系的に解説
デジタル化の進展により、BtoB企業における顧客の購買行動は大きく変化しています。かつては営業担当者が唯一の情報源でしたが、現在では顧客自身がWebを通じて製品・サービスを調査し、比較検討を行うようになりました。
一方で、以下のような声も増えています。
- BtoB向けのWebマーケティングは何から始めればよいのか分からない
- 施策を実行しているが、なかなか成果に結びつかない
- マーケティング部門と営業部門の連携がうまくいっていない
そこで本記事では、BtoB企業がWebマーケティングに取り組む際の基本的な考え方から、具体的な施策、戦略設計の進め方、そして成果を出すための組織体制まで、体系的に解説します。
目次
BtoB Webマーケティングとは
BtoB Webマーケティングとは、企業間取引(Business to Business)を行う企業が、Webを活用して見込み客を獲得し、育成し、最終的に受注につなげるためのマーケティング活動全般を指します。
このセクションでは、BtoBビジネス特有の購買プロセスと、なぜ今Webマーケティングが重要になっているのかを解説します。
BtoBビジネスの特徴と購買プロセス
BtoBビジネスには、BtoC(企業対消費者)とは異なるいくつかの特徴があります。これらの特徴を理解することが、効果的なWebマーケティング戦略を立てる第一歩となります。
意思決定に複数の担当者が関与する
BtoCでは個人が購買を決定しますが、BtoBでは複数の担当者が意思決定に関わります。例えば、システム導入を検討する場合、現場の担当者、IT部門、経理部門、そして最終的な決裁者である経営層など、それぞれの立場から製品・サービスが評価されます。
そのため、ターゲットとなる担当者ごとに、提供すべき情報や訴求ポイントが異なります。現場担当者には使いやすさや業務効率化のメリットを、経営層には投資対効果や経営課題の解決を訴求する必要があります。
購買プロセスが長期化する傾向がある
BtoB商材は一般的に単価が高く、導入後の影響範囲も大きいため、購買決定までに時間がかかります。数週間から数か月、大規模な案件では1年以上かかることも珍しくありません。
この長い検討期間において、見込み客との継続的なコミュニケーションを維持することが重要です。一度の接点で購買に至ることは少なく、複数のタッチポイントを通じて信頼関係を構築していく必要があります。
論理的な判断が重視される
BtoCでは感情や衝動が購買に影響しますが、BtoBでは論理的な判断が重視されます。「なぜこの製品を選ぶのか」「導入によってどのような効果が得られるのか」を、社内の関係者に説明できる材料が必要です。
そのため、製品の機能や価格だけでなく、導入事例、ROI(投資対効果)の試算、比較検討資料など、意思決定を支援する情報を提供することが求められます。
WebマーケティングがBtoBで重要になった理由
従来のBtoBビジネスでは、営業担当者が顧客との主要な接点でした。しかし、近年の調査によると、BtoBの買い手は意思決定プロセスの大部分を、営業担当者と接触する前に完了しているとされています。
顧客の情報収集行動の変化
インターネットの普及により、顧客は自ら情報を収集できるようになりました。製品やサービスについて知りたいとき、まず検索エンジンで調べ、企業のWebサイトを訪問し、比較サイトで複数の選択肢を検討します。
この変化は、BtoB企業にとって大きな意味を持ちます。顧客が情報収集を行う段階で、自社の存在を認知してもらい、有益な情報を提供できなければ、検討の土俵にすら上がれない可能性があるのです。
企業のWebサイトが重要な情報源に
BtoB企業の担当者が製品やサービスを検討する際、最も利用する情報源は「企業のWebサイト」であるとする調査結果があります。営業担当者からの説明よりも先に、Webサイトで情報を収集し、ある程度の絞り込みを行っているのです。
このことは、Webサイトが単なる「会社案内」ではなく、見込み客との重要な接点であり、商談機会を創出するための戦略的な資産であることを意味します。
営業生産性向上への貢献
Webマーケティングを活用することで、見込み客が自ら情報を収集し、検討を進める段階をサポートできます。営業担当者は、購買意欲が高まった段階で商談に集中できるため、営業活動の効率化にもつながります。
これは、限られた営業リソースを有効活用するという観点からも、BtoB企業にとって重要な意味を持ちます。
BtoB Webマーケティングの基本プロセス
BtoB Webマーケティングでは、見込み客を獲得してから受注に至るまでの一連の流れを設計することが重要です。この流れは「デマンドジェネレーション」と呼ばれ、大きく3つのプロセスで構成されます。
- リードジェネレーション: 見込み客の獲得
- リードナーチャリング: 見込み客の育成
- リードクオリフィケーション: 見込み客の選別と営業への引き渡し
この3つのプロセスを効率的に回すことで、マーケティング活動と営業活動の連携が強化され、最終的な売上向上につながります。
リード獲得(リードジェネレーション)
リードジェネレーションとは、自社の製品・サービスに興味関心を持つ見込み客の情報を獲得する活動です。BtoB領域では、企業名、担当者名、連絡先などの情報を取得することを意味します。
リード獲得の2つの段階
リード獲得は、大きく2つの段階に分けて考えることができます。
- 集客: Webサイトやランディングページに見込み客を誘導する
- コンバージョン促進: 訪問者に資料請求や問い合わせなどのアクションを起こしてもらう
集客だけでは成果につながりません。訪問者がアクションを起こしやすい導線設計や、価値のあるコンテンツの提供が必要です。
主なリード獲得施策
BtoB企業が活用できるリード獲得施策には、以下のようなものがあります。
| 施策 | 特徴 |
|---|---|
| SEO・コンテンツマーケティング | 検索エンジンからの流入を獲得。中長期的な資産になる |
| リスティング広告 | 検索キーワードに連動した広告。即効性がある |
| SNS広告 | ターゲティング精度が高い。認知拡大に有効 |
| ホワイトペーパー | ノウハウ資料の提供。リード情報と引き換えにダウンロード |
| ウェビナー | オンラインセミナー。質の高いリードを獲得しやすい |
重要なのは、単にリード数を増やすことではありません。後続する商談や受注につながる「質の高いリード」を獲得することが、真の成果です。数を追い求めるあまり質を犠牲にすると、営業リソースを無駄に消費することになります。
また、リード獲得施策を考える際に見落とされがちなのが、「受け口」となるサービスページの最適化です。どれだけ広告やSEOでトラフィックを増やしても、訪問者がサービスページで離脱してしまっては成果につながりません。
ある企業の事例では、各施策の中で全チャネルの受け皿となっているサービスサイトが成果へのインパクトが大きく、かつ他の施策を行なってもサービスサイトでリードの取りこぼしが起きてしまうと成果につながらない可能性があると判断し、サービスサイトの改修から着手しました。その上で、リードの母数を最大化するためにデジタル広告やコンテンツSEOに着手する、という順番で施策を展開しています。
このように、「穴の空いたバケツに水を注がない」という視点で、まずはコンバージョンの受け皿を整えてから集客施策に投資するという考え方が、限られたリソースで最大の成果を出すためには有効です。
リード育成(リードナーチャリング)
リードナーチャリングとは、獲得した見込み客に対して継続的にコミュニケーションを取り、購買意欲を高めていく活動です。「ナーチャリング」は「育成」を意味し、見込み客を段階的に商談可能な状態へと導きます。
なぜリードナーチャリングが必要なのか
BtoB領域では、リード獲得から受注までの期間が長いため、その間に見込み客の興味関心を維持・向上させることが重要です。適切なナーチャリングがなければ、せっかく獲得したリードが休眠化してしまいます。
ある調査では、放置されたリードの多くが一定期間内に競合他社から購入しているとされています。継続的なコミュニケーションを通じて、自社を想起してもらえる状態を維持することが大切です。
リードナーチャリングの主な手法
- メールマーケティング: リードの段階や興味関心に合わせた情報をメールで配信
- 導入事例の提供: 同業種や類似課題を持つ企業の事例を紹介し、具体的なイメージを持ってもらう
- セミナー・ウェビナー: 専門知識を提供しながら、自社サービスへの理解を深めてもらう
- インサイドセールス: 電話やオンライン面談でリードの課題をヒアリングし、適切な情報を提供
効果的なナーチャリングを行うためには、リードの属性や行動履歴に基づいてセグメントを分け、それぞれに適したコンテンツを提供することが重要です。同じ内容を一斉送信するのではなく、リードの状況に合わせたコミュニケーションを設計します。
リード選別と営業連携
リードクオリフィケーションとは、育成したリードの中から、営業がアプローチすべき「ホットリード」を選別する活動です。購買確度の高いリードを営業部門に引き渡すことで、営業活動の効率化を図ります。
リードスコアリングの考え方
リードの購買確度を判断するために、「リードスコアリング」という手法が用いられます。リードの属性(業種、企業規模、役職など)や行動(Webサイトの閲覧履歴、資料ダウンロード、ウェビナー参加など)に点数を付け、一定のスコアに達したリードを「ホットリード」として営業に引き渡します。
例えば、以下のような基準でスコアを設定します。
- 資料ダウンロード: +10点
- 製品ページの閲覧: +5点
- 価格ページの閲覧: +15点
- ウェビナー参加: +20点
- 役職が決裁者: +10点
マーケティングと営業の連携
BtoBマーケティングにおいて、マーケティング部門と営業部門の連携は成果創出の鍵を握ります。両者の間に溝があると、「マーケのリードは質が悪い」「営業が動いてくれない」といった相互不信が生まれ、成果につながりにくくなります。
連携を強化するためのポイントは以下の通りです。
- 共通の目標設定: リード数だけでなく、商談化率や受注率まで含めた共通のKPIを設定する
- リード定義の明確化: どのような条件を満たしたリードを「ホットリード」とするか、両者で合意する
- 定期的なフィードバック: 営業からのフィードバックをマーケティング施策の改善に活かす
ここで重要なのは、マーケティング部門が「自部門ではコントロールできない指標」を敢えて持つことです。例えば、リード数だけでなく商談化率も指標として持つことで、「営業が求めているリードはどのようなものか」を考える機会が生まれます。
BtoB Webマーケティングの主要施策
BtoB Webマーケティングで活用される主要な施策について解説します。それぞれの特徴を理解し、自社の状況に合わせて組み合わせることが重要です。
SEOとコンテンツマーケティング
SEO(検索エンジン最適化)とコンテンツマーケティングは、BtoB Webマーケティングにおいて中心的な役割を果たす施策です。
SEOの役割
SEOとは、Googleなどの検索エンジンで自社のWebサイトを上位表示させるための施策です。BtoBの顧客は、課題解決のために検索エンジンを活用して情報収集を行います。検索結果の上位に表示されることで、潜在顧客との接点を作ることができます。
検索順位とクリック率(CTR)には大きな相関があり、1位と10位では大きな差が生まれます。そのため、ターゲットとなる顧客が検索するキーワードで上位表示を獲得することが重要です。
コンテンツマーケティングの考え方
コンテンツマーケティングとは、見込み客にとって価値のあるコンテンツを通じて、認知を獲得し、信頼関係を構築し、最終的に成果(問い合わせや資料請求など)につなげる手法です。
ここで重要なのは、「コンテンツそれ自体に意味があるのではなく、コンテンツから生まれるコミュニケーションに意味がある」という考え方です。情報を一方的に詰め込むのではなく、読者との対話を意識したコンテンツ設計が求められます。
BtoBで効果的なコンテンツ例
- ノウハウ記事: 業界の課題解決に役立つ情報を提供
- 導入事例: 実際の導入企業の成果を紹介
- 比較記事: 製品・サービス選定の判断材料を提供
- 用語解説: 専門用語の解説で初心者の理解を支援
コンテンツマーケティングは成果が出るまでに時間がかかる施策です。一般的に、安定した成果が出るまでには半年から1年程度の継続が必要とされています。短期的な成果を求めるのではなく、中長期的な視点で取り組むことが重要です。
Web広告(リスティング・ディスプレイ)
Web広告は、即効性のあるリード獲得手法として活用されます。特にBtoB領域では、リスティング広告が基本的かつ効果的な施策として位置づけられています。
リスティング広告の特徴
リスティング広告は、検索エンジンの検索結果に表示される広告です。ユーザーが特定のキーワードで検索したときに広告が表示されるため、すでに課題認識があり、解決策を探している「比較・検討」段階の見込み客にアプローチできます。
BtoBにおけるリスティング広告のポイントは以下の通りです。
- キーワード選定: 商品名や一般的なキーワードだけでなく、顧客の課題に関連するキーワードも検討
- ランディングページの最適化: 広告からの流入先となるページで、ユーザーの期待に応える情報を提供
- コンバージョン設計: 問い合わせだけでなく、資料ダウンロードなど複数のコンバージョンポイントを用意
ディスプレイ広告の活用
ディスプレイ広告は、Webサイトやアプリの広告枠に表示されるバナー形式の広告です。認知拡大や、一度サイトを訪問したユーザーへの再アプローチ(リターゲティング)に活用されます。
BtoB領域では、リターゲティング広告が特に有効です。一度Webサイトを訪問した見込み客に対して継続的に広告を表示することで、検討期間中に自社を想起してもらいやすくなります。
広告運用で大切な視点
広告運用においては、テクニックに走るのではなく、「目の前に人がいたら、どう話すか」という視点が重要です。クリック率やコンバージョン率といった数値を追いかけることも大切ですが、その先にいる顧客が何を求めているのかを常に意識する必要があります。
また、広告単体で成果を判断するのではなく、広告で獲得したリードがその後どうなったか(商談化率、受注率)まで追跡することで、真の投資対効果を把握できます。
ホワイトペーパーとウェビナー
ホワイトペーパーとウェビナーは、質の高いリードを獲得するための有効な手法です。
ホワイトペーパーの活用
ホワイトペーパーとは、特定のテーマに関するノウハウや調査結果をまとめた資料です。見込み客は、資料をダウンロードする際に連絡先情報を入力するため、リード獲得のコンバージョンポイントとして機能します。
効果的なホワイトペーパーを作成するポイントは以下の通りです。
- 読者の課題解決に役立つ内容: 自社サービスの紹介ではなく、読者が知りたい情報を提供
- 具体的で実践的な内容: 抽象的な話ではなく、すぐに活用できるノウハウを含める
- 適切なボリューム: 長すぎず、要点がまとまった読みやすい構成
ウェビナーの活用
ウェビナー(オンラインセミナー)は、見込み客に直接価値を提供しながら、自社サービスへの理解を深めてもらう機会です。オンラインで開催されるため、場所を選ばず広範囲の見込み客にアプローチできます。
BtoB領域でのウェビナー活用のポイントは以下の通りです。
- 参加者にとって価値のあるテーマ設定: 自社サービスの紹介ではなく、参加者の課題解決に焦点を当てる
- 質疑応答の時間を確保: 参加者との双方向コミュニケーションで信頼関係を構築
- アーカイブ配信の活用: 録画を継続的なリード獲得資産として活用
ウェビナー後は、参加者に対してフォローアップを行い、ナーチャリングのフローに乗せることが重要です。参加者の質問内容や視聴態度から、購買意欲の高い見込み客を特定することもできます。
戦略設計の進め方
Webマーケティング施策を効果的に実行するためには、事前の戦略設計が不可欠です。「施策ありき」で進めると、成果につながらないだけでなく、リソースを無駄にしてしまう可能性があります。
市場分析とターゲット設定
戦略設計の第一歩は、市場環境の分析とターゲットの明確化です。
市場環境の分析
自社を取り巻く市場環境を把握するために、以下のような分析を行います。
- 市場動向: 市場規模、成長性、トレンドの把握
- 顧客分析: 顧客の課題、ニーズ、購買行動の理解
- 競合分析: 競合他社の強み・弱み、差別化ポイントの把握
- 自社分析: 自社の強み・弱み、提供できる価値の明確化
これらの分析を通じて、「誰に」「何を」「どのように伝えるのか」という基本方針を定めます。
ターゲットの明確化
BtoB Webマーケティングでは、ターゲットを絞り込むことが重要です。ターゲットが不明確なままでは、誰にも刺さらないコンテンツや施策になってしまいます。
ターゲット設定では、以下の要素を検討します。
- 業種・業界: どの業界の企業をターゲットとするか
- 企業規模: 大企業、中堅企業、中小企業のどこを狙うか
- 部門・役職: 現場担当者、管理職、経営層のどこにアプローチするか
- 課題・ニーズ: どのような課題を持つ企業をターゲットとするか
限られたリソースで成果を出すためには、「選択と集中」が重要です。全方位に手を広げるのではなく、自社の強みが活きるターゲットに集中することで、効率的な施策展開が可能になります。
ペルソナ・カスタマージャーニーの設計
ターゲットを明確にしたら、より具体的な顧客像(ペルソナ)と、その顧客が購買に至るまでの行動プロセス(カスタマージャーニー)を設計します。
ペルソナの設定
ペルソナとは、ターゲットとなる顧客像を具体的な人物として設定したものです。単に「30代の情報システム部門担当者」という属性だけでなく、その人物の日常業務、抱えている課題、情報収集の方法、意思決定のプロセスまでを詳細に描きます。
ペルソナを設定する際のポイントは以下の通りです。
- 実在する顧客をベースにする: 想像だけでなく、実際の顧客へのヒアリングや営業からのフィードバックを参考に
- 具体的なストーリーを描く: 一日の過ごし方、課題が発生するシーン、情報収集の行動などを具体的に
- 定期的に見直す: 市場環境や顧客の変化に合わせて、ペルソナも更新する
カスタマージャーニーマップの作成
カスタマージャーニーマップとは、ペルソナが自社製品・サービスを認知してから購買に至るまでのプロセスを可視化したものです。各段階で顧客がどのような行動を取り、何を考え、どのような情報を求めているかを整理します。
カスタマージャーニーマップの横軸には、購買プロセスの段階を設定します。
- 認知: 課題を認識し、解決策を探し始める
- 情報収集: 複数の選択肢について情報を集める
- 比較検討: 候補を絞り込み、詳細に比較する
- 意思決定: 最終的な購買決定を行う
縦軸には、各段階での顧客行動、接点(タッチポイント)、思考・感情、課題、自社のアクションなどを記載します。このマップを基に、各段階で提供すべきコンテンツや施策を検討します。
KPI設定と施策の優先順位
戦略を実行に移す前に、成果を測定するためのKPI(重要業績評価指標)を設定し、施策の優先順位を決める必要があります。
KPIツリーの構築
KPIツリーとは、最終目標(KGI)を達成するために必要な要素を、樹形図で可視化したものです。KPIツリーを作ることで、「目標を達成するためには何が必要なのか」「どこを改善すればよいのか」が明確になります。
例えば、「年間リード獲得数1,000件」というKGIを設定した場合、以下のようにKPIを分解します。
年間リード獲得数1,000件(KGI)
├── Webサイト訪問者数
│ ├── 自然検索流入数
│ ├── 広告流入数
│ └── SNS流入数
└── コンバージョン率
├── 資料ダウンロード率
├── 問い合わせフォーム送信率
└── ウェビナー申込率
KPIを設定する際は、「SMART」の原則を意識します。
- S(Specific): 明確である
- M(Measurable): 測定可能である
- A(Achievable): 達成可能である
- R(Relevant): 目標と関連性がある
- T(Time-bound): 期限がある
施策の優先順位付け
限られたリソースで最大の成果を出すためには、施策の優先順位を明確にする必要があります。
優先順位を決める際の考え方として、「コンバージョン率の改善を先に行う」という視点があります。認知拡大の施策でアクセス数を増やしても、コンバージョン率が低ければ成果にはつながりません。これは「穴の空いたバケツに水を注ぐようなもの」と表現されることもあります。
施策の優先順位を決める際は、以下の観点で評価します。
- 成果への影響度: その施策が目標達成にどの程度貢献するか
- 実行の容易さ: 必要なリソース、期間、難易度
- 即効性: 成果が出るまでの期間
これらの観点を総合的に判断し、「すぐに取り組むべき施策」「中期的に取り組む施策」「長期的に検討する施策」に分類します。
成果を出すための組織体制
Webマーケティングで成果を出すためには、施策の実行だけでなく、それを支える組織体制の構築が重要です。
マーケティング組織の立ち上げ方
BtoB企業がWebマーケティングに本格的に取り組む際、組織体制をどのように整えるかは重要な課題です。
段階的な組織構築
最初から大規模なマーケティング組織を構築する必要はありません。まずは少人数で始め、成果を出しながら段階的に拡大していく方法が現実的です。
立ち上げ初期の段階では、以下の役割を担う人材が必要です。
- マーケティング責任者: 戦略立案、KPI管理、他部門との連携
- コンテンツ担当: 記事作成、ホワイトペーパー制作、Webサイト更新
- 施策実行担当: 広告運用、メール配信、データ分析
少人数でも成果を出すためには、「何をやるか」だけでなく「何をやらないか」を明確にすることが重要です。全ての施策に手を出すのではなく、最も効果が見込める施策に集中します。
外部パートナーの活用
社内リソースだけでは対応が難しい場合、外部パートナーの活用も選択肢となります。特に、専門的な知識やスキルが必要な領域(SEO、広告運用、コンテンツ制作など)では、経験豊富なパートナーのサポートを受けることで、成果を出すまでの期間を短縮できる可能性があります。
外部パートナーを選ぶ際は、単なる「作業の外注先」ではなく、自社の成果にコミットしてくれる「中核パートナー」を選ぶ視点が重要です。戦略立案から施策実行、組織開発まで一気通貫で支援できるパートナーであれば、持続可能な成長基盤の構築につながります。
ある業務支援系クラウドサービス企業では、リファラル依存による案件獲得が主軸となっており、新規顧客の獲得が頭打ちになっていました。デジタルマーケティングの活用が不可欠でしたが、組織内には専門知識を持つ人材がおらず、何から始めるべきか指針が不足している状態でした。
そこで、外部パートナーと協力し、「誰に、何を、どのように届けるべきか」という基本戦略を整理。ターゲットとなる顧客を特定し、提供価値を明確にした上で、デジタルマーケティングを推進するための戦略基盤を構築しました。
同時に、施策実行に必要なスキルセットを棚卸しし、業務委託をアサインすることでスピーディーに体制を構築。ベンチャー企業特有の「やるべきことが多く、優先順位の変更が常に発生する」状況に柔軟に対応しながら、施策実行のスピードを維持しました。
その結果、マーケティングのノウハウがまったくなく、何から始めればいいかわからない状態から、約1年で国内市場No.1のシェアを獲得するに至りました。この事例から学べるのは、「自社だけで完結しようとせず、足りないリソースは外部から補いながらも、戦略の軸はしっかりと自社で持つ」という姿勢の重要性です。
成果を出す組織の特徴
自走してマーケティング成果を出せる組織には、いくつかの共通要素があります。
- 共通の目的・成果目標: 組織全体で共有された明確な目標
- 責任感のあるリーダー: 目標に向かって意思決定を行い、メンバーを導く存在
- 明確な判断軸: 施策の優先順位や予算配分において一貫した基準
- 成果につながる手法の習得: 知識だけでなく、実行できるスキル
- 実際の成果創出: 成功体験による組織の自信と成長
営業との連携とMAツールの活用
BtoBマーケティングにおいて、マーケティング部門と営業部門の連携は避けて通れないテーマです。
連携を阻む壁と解決策
マーケティング部門と営業部門の間には、しばしば認識のズレが生じます。
- 「マーケティングが送ってくるリードは質が低い」
- 「営業がリードをフォローしてくれない」
このような相互不信を解消するためには、両者を巻き込んで顧客像から議論を構築し直す必要があります。ペルソナやカスタマージャーニーを営業も含めて再設計し、組織としての目指すべき方向性を統一させることが重要です。
MAツールの役割
MA(マーケティングオートメーション)ツールは、リード管理、スコアリング、メール配信の自動化などの機能を提供し、マーケティング活動の効率化を支援します。
MAツールを活用することで、以下のことが可能になります。
- リードの一元管理: 獲得したリードの情報を一箇所で管理
- 行動追跡: Webサイトの閲覧履歴、メールの開封・クリックなどを記録
- リードスコアリング: 行動に基づいて購買確度を自動的に判定
- 自動化されたナーチャリング: 条件に応じたメール配信の自動化
ただし、MAツールは万能ではありません。ツールを導入すれば自動的に成果が出るわけではなく、戦略設計やコンテンツ制作、組織間の連携など、人の手による取り組みが不可欠です。
リードの質にこだわる文化づくり
最終的に重要なのは、組織全体で「リードの質」にこだわる文化を作ることです。リード数という表面的な数字だけで評価するのではなく、そのリードが商談につながったか、受注に至ったかまでを追跡し、評価の対象とします。
弊社の支援事例でも、リード数を増やすことよりも、案件化率の向上に注力することで、インバウンドからのリードが高い確率で商談化するという成果を実現したケースがあります。これは、マーケティング部門が営業との連携を深め、本当に必要とされるリードの定義を明確にした結果です。
ある業務支援系SaaS企業では、サービスサイトのリニューアルプロジェクトにおいて、会社としてのありたい姿や実現したい世界観と、ユーザーが求めているインサイトを加味してシナリオや訴求軸を定めました。全体の訴求軸と企業としての世界観を伝えるためのシナリオに沿って、サービス紹介ページ、機能紹介ページ、コンテンツ、問い合わせフォーム、Thanksページなど、サイトの全ての下層ページでユーザーとのコミュニケーションを見直しています。
その結果、リニューアル前後でCV数が200から300へと1.5倍増加しました。一方でWebサイトへのセッション数には大きな変化はなかったことから、Webサイト内のCTA改善や構成へのテコ入れだけでCVRを劇的に改善できることが証明されました。
この事例が示すのは、「トラフィックを増やす」ことと「CVRを高める」ことは別のアプローチであり、後者の方がしばしば少ない投資で大きな成果を生み出せるということです。マーケティングと営業の連携においても、「どれだけのリードを渡すか」よりも「どれだけ質の高いリードを渡せるか」に焦点を当てることが、組織全体の成果最大化につながります。
まとめ
BtoB Webマーケティングは、単なるWebサイトの運用や広告配信ではありません。顧客の購買行動の変化を捉え、適切なタイミングで適切な情報を提供し、見込み客を育成して受注につなげる一連のプロセスです。
本記事で解説したポイントを整理すると、以下のようになります。
- BtoBビジネスの特徴(複数の意思決定者、長い検討期間、論理的判断)を理解した上で施策を設計する
- リード獲得、リード育成、リード選別の3つのプロセスを一貫して設計する
- 施策実行の前に、市場分析、ターゲット設定、ペルソナ・カスタマージャーニー設計などの戦略設計を行う
- リード数だけでなく、商談化率や受注率まで含めた「質」にこだわる
- マーケティング部門と営業部門の連携を強化し、共通の目標に向かって協力する体制を構築する
Webマーケティングは成果が出るまでに時間がかかる施策も多いため、中長期的な視点で取り組むことが重要です。まずは自社の現状を把握し、優先順位の高い施策から着実に実行していくことをお勧めします。
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