BtoBマーケティング戦略の立て方|5ステップで成果を出す設計手順

BtoBマーケティング戦略の立て方|5ステップで成果を出す設計手順

BtoBマーケティングを取り巻く環境は、デジタル化の加速やAI技術の進化により大きく変化しています。

一方で、以下のような声も増えています。

  • 施策を実行しているが、期待した成果に繋がらない
  • 営業部門との連携がうまくいかず、リードの質に課題がある
  • 何から優先的に取り組めばよいのか分からない

そこで本記事では、BtoBマーケティング戦略の立て方を5つのステップで解説します。目的設定から施策選定、KPI設計、営業連携まで、成果創出に必要な要素を体系的にお伝えします。

BtoBマーケティング戦略とは何か

BtoBマーケティング戦略を効果的に設計するためには、まず基本的な概念と特性を正しく理解することが重要です。ここでは、BtoBマーケティングの定義から、BtoCとの違い、そして戦略が重視される背景まで解説します。

BtoBマーケティングの定義と目的

BtoBマーケティングとは、企業が他の企業に対して商品やサービスを販売するためのマーケティング活動全般を指します。最終的な目的は「受注・売上の創出」ですが、そこに至るまでにはリード獲得、ナーチャリング(育成)、商談化という複数のプロセスを経る必要があります。

BtoBマーケティングの特徴として、購買決定に複数の担当者が関与することが挙げられます。実際にサービスを利用する現場担当者、導入を推進する推進者、最終的な決裁を行う決裁者など、それぞれ異なる立場の人々が意思決定に参加します。そのため、各関与者のニーズを理解し、適切な情報を適切なタイミングで届けることが求められます。

また、BtoBでは商材単価が高く、検討期間が長期化する傾向があります。一度の接点で購入に至ることは稀であり、継続的なコミュニケーションを通じて信頼関係を構築していく必要があります。このような特性から、「戦略」を持たずに場当たり的な施策を実行しても、なかなか成果に繋がりません。

BtoCマーケティングとの違い

BtoBマーケティングとBtoCマーケティングの最も大きな違いは、購買決定プロセスにあります。

BtoCでは個人の感情や衝動が購買に大きく影響します。「欲しい」と感じた瞬間に購入ボタンを押すことも珍しくありません。一方、BtoBでは論理的な判断が重視されます。ROI(投資対効果)、業務課題の解決、運用コストの削減といった合理的な要素が購買決定の判断軸となります。

ターゲットの母数も大きく異なります。BtoCでは数百万人規模の消費者にアプローチすることもありますが、BtoBではターゲット企業が限られているケースが一般的です。そのため、幅広くアプローチするよりも、ターゲットを絞り込んで質の高いリードを獲得する戦略が有効となります。

さらに、BtoBでは「価格」だけでなく「プロセス全体の改善余地」や「導入後のサポート体制」といった総合的な判断で購買決定がなされます。この点を理解せずに価格競争に陥ると、本来得られるはずの受注を逃してしまう可能性があります。

なぜ今「戦略」が重要視されているのか

近年、BtoBマーケティングにおいて「戦略」の重要性が高まっている背景には、いくつかの環境変化があります。

第一に、購買行動のデジタルシフトが挙げられます。BtoB購買担当者の多くが、営業担当者に会う前に購買プロセスの大半を済ませているという調査結果もあります。オンラインでの情報収集、比較検討が一般化したことで、初期接点の質がこれまで以上に重要になっています。

第二に、競合環境の激化があります。多くの企業がデジタルマーケティングに取り組むようになり、同じような施策を実行するだけでは差別化が困難になっています。自社の強みを活かした独自の戦略がなければ、競合の中に埋没してしまいます。

第三に、プライバシー規制の強化があります。サードパーティCookieの廃止に伴い、従来型のターゲティング広告の効果が低下しています。自社で収集したファーストパーティデータを活用する戦略への転換が求められています。

これらの変化に対応するためには、個別の施策をバラバラに実行するのではなく、一貫した戦略のもとで各施策を連携させることが不可欠です。戦略なき施策は、リソースの浪費に繋がりかねません。

BtoBマーケティング戦略を設計する5つのステップ

BtoBマーケティング戦略を成功させるためには、体系的なアプローチが必要です。ここでは、目的設定からKPI設計まで、5つのステップで戦略設計の手順を解説します。

ステップ1 目的・KGIの明確化

戦略設計の出発点は、「何のためにBtoBマーケティングに取り組むのか」という目的の明確化です。目的が曖昧なまま施策を開始すると、何をもって成功とするのかが分からず、PDCAを回すことができません。

BtoBマーケティングの目的は、企業によって異なります。代表的な例としては以下が挙げられます。

  • 新規リードの獲得数を増やしたい
  • 既存リードからの商談化率を高めたい
  • 特定のターゲット企業との接点を作りたい
  • 自社の認知度を向上させたい

目的を定めたら、それをKGI(重要目標達成指標)として数値化します。「リード獲得数を月間100件にする」「商談化率を20%から30%に引き上げる」といった具体的な目標を設定することで、施策の方向性が明確になります。

ここで重要なのは、KGIを事業目標から逆算して設定することです。マーケティング部門だけの目標ではなく、売上目標や事業計画との整合性を取ることで、経営層や他部門からの理解・協力を得やすくなります。

ステップ2 ターゲット・ペルソナ設定

目的が明確になったら、次は「誰に対してアプローチするのか」を定義します。ターゲット設定が曖昧だと、メッセージが誰にも刺さらない状態に陥りがちです。

ターゲット設定には、STP分析(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)のフレームワークが有効です。市場を細分化し、自社が注力すべきセグメントを選定し、そのセグメントにおける自社のポジショニングを明確にします。

さらに具体的なアプローチとして、ペルソナの設定を行います。ペルソナとは、ターゲットとなる顧客像を具体的に描いたものです。BtoBの場合は、以下のような要素を設定します。

  • 企業属性:業種、従業員規模、売上規模、所在地
  • 担当者属性:部署、役職、決裁権の有無、年齢層
  • 課題・悩み:業務上の課題、達成したい目標
  • 情報収集行動:利用するメディア、検索するキーワード

ペルソナは一度作って終わりではなく、実際の顧客データや営業からのフィードバックを基に定期的に見直すことが重要です。市場環境や顧客ニーズの変化に合わせて、ペルソナも更新していく必要があります。

ペルソナ設定で成果を上げた事例

ある人材サービス企業では、広告単価の上昇と検索経由の流入競争が激化する中で、初回コンタクトの獲得数が伸び悩んでいました。対象ユーザー層が広く設定されていたため、どの層が成果に直結しやすいかの可視化が不十分で、ターゲティング精度の最適化が進まない状況が続いていたのです。

この企業では、現場のキャリアアドバイザーに対する複数回のヒアリングを実施し、ペルソナおよびカスタマージャーニーを作成しました。その結果、一般的な訴求軸に共感する層よりも、特定の状況において「主体的に動きづらいため、効率的にサポートを受けたい」といったニーズを持つユーザーが一定数存在することが明らかになりました。

また、自社のユーザー行動に関する定量データが、他社が一般に提示している数値傾向とは異なることも確認されました。この発見を基に、ターゲットのニーズに沿った訴求内容に変更するため情報整理を実施。すでに蓄積されている数値や事業部の重要視するポイント、過去の実績を再評価した上で、訴求すべき軸や提供すべき情報を再構築しました。

結果として、指名検索からのCVRが倍以上に向上し、スカウトメールのCVRも半数以上の媒体で倍増するという成果を得ています。

この事例から学べるポイントは、ペルソナ設定において以下の点を意識することです。

  • 現場の声を活用する: 営業やカスタマーサポートなど、顧客と直接接点を持つメンバーへのヒアリングを通じて、顧客の解像度を高める
  • 定量データと定性情報を組み合わせる: 数値だけでなく、その背景にある顧客心理を理解することで、より精度の高いペルソナを構築できる
  • 既存の常識を疑う: 業界一般の傾向と自社顧客の傾向が異なる場合があることを認識し、自社独自のターゲット像を描く

ステップ3 カスタマージャーニーの設計

ターゲットが明確になったら、その顧客がどのようなプロセスを経て購買に至るのかを可視化します。これがカスタマージャーニーマップです。

カスタマージャーニーマップでは、横軸に顧客の態度変容ステージ(認知、興味・関心、比較・検討、購入など)、縦軸に顧客の行動、接点、思考、課題感を設定します。各ステージで顧客が何を考え、どのような行動を取るのかを整理することで、適切なタイミングで適切なコミュニケーションを取るための設計が可能になります。

BtoBのカスタマージャーニーで特に意識すべきポイントは以下の通りです。

  • 複数の関与者が存在することを考慮する(現場担当者と決裁者では求める情報が異なる)
  • 検討期間が長いため、途中で離脱されないための継続的なコミュニケーション設計が必要
  • オンラインとオフラインの接点を組み合わせて考える

カスタマージャーニーを設計することで、「認知段階ではどのようなコンテンツが必要か」「比較検討段階ではどのような情報を提供すべきか」といった施策の方向性が見えてきます。

ステップ4 施策選定と優先順位付け

カスタマージャーニーが設計できたら、各ステージに対応する具体的な施策を選定します。BtoBマーケティングには多様な施策がありますが、すべてを同時に実行することは現実的ではありません。限られたリソースの中で最大の成果を出すためには、優先順位付けが重要です。

施策の優先順位を決める際には、以下の観点で評価します。

  • 目的との整合性:KGI達成に直結する施策かどうか
  • 実現可能性:社内リソースや予算で実行可能かどうか
  • 期待効果と時間軸:短期で成果が出るか、中長期的な投資が必要か

例えば、「すぐにリードを獲得したい」という目的であれば、リスティング広告やウェビナーといった即効性のある施策が候補になります。一方、「長期的に安定したリード獲得の仕組みを作りたい」という目的であれば、オウンドメディアやコンテンツSEOへの投資が有効です。

重要なのは、「施策ありき」で考えないことです。流行している施策や競合が実施している施策をそのまま真似しても、自社の目的やターゲットに合っていなければ成果には繋がりません。

施策の優先順位付けで成功した事例

ある業務支援系クラウドサービス企業では、デジタルマーケティングを本格化させるにあたり、解決すべき課題が多い状況でした。リファラル依存による案件獲得が主軸となっており、新規顧客の獲得が頭打ちになっていたのです。

この企業では、調査をもとに明らかになった訴求すべきターゲット像から、新たなカスタマージャーニーを再作成。それと同時に各チャネルの課題と課題に対する解決方法を整理し、全体戦略に落とし込みました。

短期で成果を出すためにどうすれば良いかという視点で、各施策の優先順位を決定。その結果、全チャネルの受け皿となっているサービスサイトが成果へのインパクトが大きいと判断しました。

他の施策を行なってもサービスサイトでリードの取りこぼしが起きてしまうと、他の施策を行なっても成果につながらない可能性があったため、サービスサイトの改修から着手することに決めました。

次にリードの母数を最大化するため、デジタル広告やコンテンツSEOに着手する方針を策定。この優先順位付けにより、約1年で国内市場No.1のシェアを獲得するという成果を実現しています。

この事例から得られる施策優先順位付けのポイントは以下の通りです。

  • 受け皿を先に整える: どんなに集客施策を強化しても、受け皿となるサイトやコンテンツが整っていなければ、リードを取りこぼしてしまう
  • 短期成果と中長期投資のバランスを取る: 即効性のある施策と、時間はかかるが資産となる施策を組み合わせる
  • 全体最適の視点を持つ: 個別施策の効果だけでなく、施策間の連携や影響を考慮して優先順位を決める

ステップ5 KPI設計と効果測定の仕組み構築

戦略設計の最後のステップは、KPI設計と効果測定の仕組み構築です。KPIとは、KGI達成に向けた中間指標であり、施策の進捗を測るための指標です。

KPI設計で陥りがちな失敗は、「リード数」だけを追いかけてしまうことです。リード数は増えても、商談に繋がらない質の低いリードばかりでは意味がありません。商談化率や受注率まで含めた指標を設計することで、マーケティング活動の本当の成果を測ることができます。

効果的なKPI設計のためには、KPIツリーの作成をお勧めします。KGIを頂点に、それを構成する要素を階層的に分解していくことで、「どこに課題があるのか」「どこを改善すれば成果に繋がるのか」が可視化されます。

また、施策ごとにKPIを設定し、定期的に効果測定を行う仕組みも必要です。データに基づいてPDCAを回すことで、施策の精度を高めていくことができます。

BtoBマーケティングの主要施策と選び方

戦略設計ができたら、具体的な施策の選定に移ります。ここでは、BtoBマーケティングの代表的な施策を「獲得」「育成」「ABM」の3つの観点から解説します。

リードジェネレーション施策(獲得)

リードジェネレーション(リード獲得)とは、見込み客の個人情報を獲得するプロセスです。BtoBマーケティングにおける最初の関門であり、この段階でターゲットに合ったリードを獲得できるかどうかが、その後の成果を大きく左右します。

代表的なリードジェネレーション施策を紹介します。

デジタル広告

リスティング広告、ディスプレイ広告、SNS広告などがあります。リスティング広告は「比較・検討」段階の顕在顧客にアプローチでき、受注に繋がりやすいリードを獲得しやすいのが特徴です。短期間で成果を出したい場合に有効ですが、継続的な広告費が必要となります。

コンテンツSEO

自社サイトにコンテンツを継続的に発信し、検索エンジンからの流入を獲得する手法です。一度上位表示を獲得すれば継続的にリードを創出できるため、中長期的な資産となります。ただし、成果が出るまでに半年から1年程度かかることが一般的です。

ウェビナー

オンラインセミナーを開催し、参加者をリードとして獲得します。製品デモ、ノウハウ解説、成功事例紹介などを通じて、質の高いリードを獲得できます。録画を活用すれば継続的なリード獲得資産としても活用可能です。

展示会

自社ブースを訪問した人と名刺交換を行い、大量のリードを獲得できます。直接会話ができるため、ターゲットかどうかの判断もその場で行えます。ただし、出展費用や人的リソースが必要なため、費用対効果の見極めが重要です。

リードジェネレーション施策を選ぶ際に重要なのは、「数」だけでなく「質」を意識することです。商談に繋がらないリードをいくら獲得しても、最終的な成果には繋がりません。

戦略の見直しでリード獲得を改善した事例

あるインフラサービス企業では、年間数億円規模の売上を誇るオウンドメディアを軸にマーケティングリードの創出を行ってきました。しかし、検索エンジンのアルゴリズム変更による検索順位の低下に直面し、それに比例して売上も低迷する状況に陥りました。

従来は記事を追加すれば検索順位が上昇し、安定した集客が可能でしたが、大手企業によるコンテンツマーケティングの強化により、競争環境が変化していたのです。

この企業では、検索順位の回復だけに固執するのではなく、「なぜ既存顧客は自社のサービスを購入したのか」という点に立ち戻って戦略を見直しました。分析の結果、これまで個別に販売・CV獲得を行っていたサービスには共通の需要があり、同時に必要になるケースが多いことが判明。個別販売ではなくセット販売で売る方が効率的であるという結論に至りました。

この考えを基に、関連する複数のサービスを一つのパッケージとして提供することで、顧客にとっては利便性が向上し、企業側にとっては1CVにつき複数のサービスを同時に提供できる仕組みを構築。結果として、過去最高のマーケティングリード数を創出し、売上は前年比で数千万円以上の増収を達成しました。

この事例から得られるリードジェネレーションのポイントは以下の通りです。

  • 施策の効果が落ちたら、戦略自体を見直す: 同じ施策を続けるだけでなく、顧客ニーズや市場環境の変化に合わせて戦略を再検討する
  • 顧客視点でサービスを再設計する: 顧客が実際に求めているものを分析し、提供方法を最適化する
  • CVRの改善にも目を向ける: 流入を増やすだけでなく、獲得効率を高める工夫も重要

リードナーチャリング施策(育成)

リードナーチャリングとは、獲得したリードの購買意欲を継続的なコミュニケーションを通じて高めていくプロセスです。BtoBでは検討期間が長いため、獲得したリードをそのまま放置すると、休眠化してしまいます。

リードナーチャリングの代表的な手法を紹介します。

メールマーケティング

リードに対してメルマガやステップメールを配信する手法です。顧客の段階に合わせて適切な情報を提供することで、購買意欲を高めます。同じ内容を一斉送信するのではなく、顧客属性や興味関心に応じてセグメント配信することが効果的です。

導入事例の提供

見込み客が持つ「本当に効果があるのか」という不安を解消するために、同業種や類似課題を持つ企業の導入事例を提供します。具体的な成果数値を示すことで、自社サービスの価値を伝えられます。

インサイドセールス

電話でのフォローアップにより、リードの課題やニーズを直接ヒアリングします。ホットリードを見極め、適切なタイミングで営業にトスアップする役割を担います。

ナーチャリングを効果的に行うためには、リードをセグメント分けし、各セグメントに最適なコミュニケーションを設計することが重要です。MA(マーケティングオートメーション)ツールを活用することで、シナリオに基づいた自動化も可能になります。

ABM(アカウントベースドマーケティング)

ABM(アカウントベースドマーケティング)とは、特定の企業(アカウント)をターゲットとして、その企業に対して個別最適化されたマーケティング・営業活動を行う手法です。

従来のマーケティングが「不特定多数にアプローチして、興味を持った人をリードとして獲得する」というアプローチであるのに対し、ABMは「最初から受注したい企業を明確にし、その企業の意思決定者にパーソナライズされたコミュニケーションを行う」というアプローチです。

ABMが有効なケースは以下の通りです。

  • ターゲット企業が明確で、その数が限られている場合
  • 商材単価が高く、1件あたりの受注価値が大きい場合
  • 購買意思決定に複数のステークホルダーが関与する場合

ABMを実践する際のポイントは、マーケティング部門と営業部門の密接な連携です。アカウントごとの戦略を共有し、両者が協力してアプローチを行うことで、効果を最大化できます。

近年では、ABMがさらに進化した概念として「ABX(アカウントベースドエクスペリエンス)」も注目されています。これは、ターゲットアカウントに対して一貫した顧客体験を提供することを重視するアプローチです。

営業部門との連携とマーケティング組織の構築

BtoBマーケティングの成果を最大化するためには、マーケティング部門単独の取り組みでは不十分です。営業部門との連携と、それを支える組織体制の構築が不可欠です。

マーケティングと営業の役割分担

マーケティング部門と営業部門の役割分担を明確にすることは、スムーズな連携の第一歩です。

一般的な役割分担として、マーケティング部門は「リードの獲得」と「リードの育成」を担当し、営業部門は「商談」と「受注」を担当します。両者の接点となるのが「リードのトスアップ」です。

ここで重要なのは、「どのような状態のリードを営業に渡すのか」という基準を明確にすることです。この基準が曖昧だと、マーケティングは「リードを渡しているのに商談化しない」と感じ、営業は「質の低いリードばかり来る」と感じてしまいます。

MQL(Marketing Qualified Lead:マーケティング部門が認定した見込み客)とSQL(Sales Qualified Lead:営業部門が認定した見込み客)の定義を両者で合意し、リードの受け渡し基準を明確にすることで、この認識のズレを解消できます。

リードの質を高める連携体制

マーケティングが獲得したリードを営業が商談化し、受注に繋げるためには、両部門間での継続的なコミュニケーションが不可欠です。

効果的な連携体制を構築するためのポイントを紹介します。

定期的なフィードバックの場を設ける

週次または月次で、マーケティングと営業の合同ミーティングを開催します。営業からは「どのようなリードが商談化しやすいか」「逆に商談化しにくいリードの特徴は何か」といったフィードバックを受け、マーケティングはそれを施策改善に活かします。

共通のKPIを持つ

マーケティング部門が「リード数」だけを追いかけ、営業部門が「受注数」だけを追いかけていると、両者の間に溝が生まれます。マーケティング部門も「商談化率」や「案件化数」を指標として持つことで、リードの質を意識した活動が促進されます。

顧客情報の共有

CRM(顧客関係管理)ツールを活用して、リードの行動履歴や商談の進捗を両部門で共有します。マーケティングは商談の結果を把握でき、営業はリードがどのような経路で獲得されたかを把握できます。

リードの質を高めることで、営業の生産性が向上し、結果として受注率の改善に繋がります。マーケティングと営業が対立するのではなく、共通の目標に向かって協力する体制を構築することが重要です。

自走できる組織の5つの条件

BtoBマーケティングで持続的に成果を出し続けるためには、外部の支援に依存するだけでなく、自社内で「自走できる組織」を構築することが求められます。

自走できる組織には、以下の5つの条件があると考えられます。

1. 共通の目的・成果目標

組織全体で共有された明確な目標がなければ、ただの人の集まりになってしまいます。事業成長に直結する目標を設定し、全員がその達成に向けて行動できる状態を作ります。

2. 責任感のあるリーダー

目標に向かって意思決定を行い、メンバーを導く存在が必要です。困難な状況下でも諦めずにやり切る責任感が、組織の成果創出を牽引します。

3. 明確な判断軸

施策の優先順位決定や予算配分において、一貫した判断軸を持つことで、意思決定にブレが生じることを防ぎます。目標から逆算した判断軸を持つことが重要です。

4. 成果につながる打ち手の習得

知識と実行力は別物です。目標につながる具体的な手法を使いこなせる状態にあることで、期限内での成果創出が可能になります。

5. 実際の成果創出

成功体験が組織の自信を生み、さらなる成長を促進します。小さな成功体験を積み重ねることで、組織全体のモチベーションが向上し、自走する力が強化されます。

これらの条件を満たすことで、マーケティング組織は持続的に成果を出し続ける「自走組織」へと成長していきます。

組織構築で成果を上げた事例

ある業務支援系クラウドサービス企業では、当時マーケティングのノウハウがまったくなく、何から始めればいいかわからない状態でした。組織内には専門知識を持つ人材がおらず、デジタルマーケティングの活用が不可欠だったにもかかわらず、何から始めるべきか指針が不足していたのです。

この企業では、まずターゲットの言語化と見直しを実施し、訴求内容や実行施策を決定しました。全体戦略、施策立案、実行施策が決定した後、それを実行するための体制やリソースがないことが明らかになりました。

そこで、施策実行に必要なスキルセットを棚卸しし、業務委託をアサインしてスピーディーに体制を構築。事業成長を実現するために、施策実行のスピードを常に意識しながら、優先順位の変更が常に発生するベンチャー企業の特性を念頭において柔軟に対応しました。

結果として、ゼロからマーケティング組織を立ち上げ、約1年で国内市場No.1のシェアを獲得。売れ続ける仕組みを早期に構築できたことで、その後のグローバル展開も視野に入れられる状況となっています。

この事例から学べる組織構築のポイントは以下の通りです。

  • スキルセットの棚卸しを行う: 施策実行に必要なスキルを明確にし、社内で賄えないスキルは外部リソースを活用する
  • スピードを重視する: 完璧な体制を整えてから動くのではなく、走りながら体制を整えていく
  • 柔軟性を持つ: 環境変化や優先順位の変更に対応できる柔軟な体制を構築する

サービスサイト改善で成果を上げた事例

ある業務支援系SaaS企業では、長年にわたり主力プロダクトを中心に事業を展開し、業界内でも一定の認知を確立していました。同社は既存のサービス提供にとどまらず、特定業界のDX推進全般を支援する立ち位置を築きたいと考え、コーポレートサイトの刷新に取り組みました。

プロジェクトでは、ユーザーのインサイトと会社としてありたい姿を加味しながら、既存サービスと新商材をどのような見せ方に落とし込むか方針を策定。これまで一貫性がなかったサービス訴求の軸を統一させ、会社としての世界観やサービスの価値がユーザーに伝わるよう全体シナリオを設計しました。

また、全体の訴求軸に沿って、サービス紹介ページ、機能紹介ページ、問い合わせフォームなど全ての下層ページでユーザーとのコミュニケーションを見直し、修正を実施。デザイン・コーディングがワイヤーフレーム通りに実行できるよう、社内体制の構築もサポートしました。

結果として、リニューアル前後でCV数が200から300へと1.5倍に増加。一方でWebサイトへのセッション数には大きな変化はなかったことから、サイト内のCTA改善や構成へのテコ入れだけでCVRを劇的に改善できることが証明されました。

この事例から学べるポイントは以下の通りです。

  • 訴求軸を統一する: バラバラだったメッセージを一貫させることで、ユーザーに伝わりやすくなる
  • ユーザー視点で設計する: 企業の主張ではなく、ユーザーの課題解決を軸にサイトを設計する
  • CVR改善の効果は大きい: 集客を増やさなくても、サイト内の改善だけで成果を大きく伸ばせる可能性がある

2026年に押さえるべきBtoBマーケティングのトレンド

BtoBマーケティングの環境は常に変化しています。ここでは、2026年に特に注目すべき3つのトレンドを解説します。

AI・生成AIの戦略的活用

AI、特に生成AIの進化は、BtoBマーケティングのあらゆるプロセスに影響を与えています。

コンテンツ制作においては、記事の下書き作成、メールの文面生成、広告クリエイティブの作成などにAIが活用されています。これにより、コンテンツ制作の効率が大幅に向上し、マーケターはより戦略的な業務に時間を割けるようになっています。

リードスコアリングや顧客行動予測においても、AIの活用が進んでいます。過去のデータを学習したAIが、どのリードが商談化しやすいかを予測し、優先的にアプローチすべきリードを特定します。

さらに、「エージェンシックAI」と呼ばれる概念も登場しています。これは、複数のタスクを自律的に実行し、目標達成に向けて行動するAIです。将来的には、マーケティング業務の多くがAIによって自動化される可能性があります。

ただし、AIはあくまでツールであり、戦略の立案や顧客理解といった部分は人間が担う必要があります。AIを「使いこなす」スキルが、これからのマーケターに求められる能力となるでしょう。

ファーストパーティデータ戦略

サードパーティCookieの廃止に伴い、ファーストパーティデータ(自社で直接収集した顧客データ)の重要性が急速に高まっています。

従来、BtoBマーケティングでは、サードパーティデータを活用したターゲティング広告が一般的でした。しかし、プライバシー規制の強化により、この手法の効果は低下しています。

ファーストパーティデータ戦略では、自社サイトでの行動履歴、メールの開封・クリック履歴、セミナーへの参加履歴など、顧客との直接的な接点から得られるデータを活用します。これらのデータを統合・分析することで、顧客の興味関心や購買意欲を把握し、パーソナライズされたコミュニケーションを実現します。

ファーストパーティデータを収集・活用するためには、顧客との接点を増やし、データを一元管理する基盤を整備することが必要です。CDP(Customer Data Platform)やMA(Marketing Automation)ツールの導入も有効な手段となります。

ABMからABXへの進化

ABM(アカウントベースドマーケティング)は、特定企業に対して個別最適化されたアプローチを行う手法として定着しています。そして今、ABMはさらに進化した「ABX(アカウントベースドエクスペリエンス)」へと発展しつつあります。

ABXでは、マーケティングだけでなく、営業、カスタマーサクセスを含めた全ての顧客接点において、ターゲットアカウントに一貫した体験を提供することを重視します。

従来のABMが「ターゲット企業に対するマーケティング活動」に焦点を当てていたのに対し、ABXは「ターゲット企業に対する顧客体験全体」を対象としています。これにより、認知から購買、そして購買後のリテンションまで、一貫した価値を提供することが可能になります。

ABXを実践するためには、部門横断での連携がこれまで以上に重要となります。マーケティング、営業、カスタマーサクセスが顧客情報を共有し、協力してアカウントにアプローチする体制を構築することが求められます。

まとめ

本記事では、BtoBマーケティング戦略の立て方を5つのステップで解説しました。

BtoBマーケティング戦略を成功させるためのポイントを改めて整理します。

  • 目的・KGIを事業目標から逆算して明確に設定する
  • ターゲット・ペルソナを具体的に定義し、カスタマージャーニーを設計する
  • 施策は「目的との整合性」「実現可能性」「期待効果と時間軸」で優先順位を付ける
  • リード数だけでなく、商談化率や受注率まで含めたKPIを設計する
  • マーケティングと営業の連携体制を構築し、共通の目標を持つ

本記事で紹介した事例のように、ペルソナ設定の精度を高めることでCVRが倍増した企業や、施策の優先順位を適切に付けることで短期間で市場シェアNo.1を獲得した企業もあります。

また、サービスサイトの改善だけでCV数を1.5倍にした事例や、戦略の見直しで過去最高のリード獲得を実現した事例からも分かるように、正しい戦略に基づいて取り組むことで、BtoBマーケティングは確実に成果を生み出します。

BtoBマーケティングは、一朝一夕で成果が出るものではありません。しかし、正しい戦略のもとで継続的に取り組むことで、持続的なリード創出と売上貢献を実現できます。

本記事が、皆様のBtoBマーケティング戦略設計の一助となれば幸いです。

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著者

永田 さおり

永田 さおり

Growth Architect

業界歴10年以上。2017年株式会社MOLTSに参画。BtoB・BtoC問わず多様な業種業態でマーケティングの立ち上げから実行までを一貫支援。組織開発やコミュニケーション設計を中心にコンサルティングを行う。

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