AIベースのプロジェクトを遅延させるキャッシュ問題と、クリアする方法
寺倉 大史
Director
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AIを導入して、業務を効率化しようとしている。メンバーもそれなりにAIを使いこなしている。なのに、プロジェクト全体で見ると、思ったほど速くなっていない。
私たちも、そんな経験をしました。
個人レベルでは、確かに生産性が上がっているんです。調べものは速くなったし、ドキュメントを作るのも楽になった。でも、プロジェクトの進行スピードを見ると、以前とあまり変わっていない気がする。
最初は「まだ使いこなせていないからかな」と思っていました。でも、よくよく振り返ってみると、原因は別のところにありました。
自分たちの頭の中に溜まった「思い込み」が、プロジェクトを遅延させていたんです。
私たちはこれを「認知キャッシュ」と呼んでいます。
認知キャッシュとは何か
ブラウザを使っていると、キャッシュが溜まりますよね。過去に読み込んだデータが残っていて、それが新しい情報の取得を妨げることがある。定期的にクリアしないと、動作が重くなったり、最新の状態が反映されなかったりする。
人の脳にも、同じようなことが起きていると私たちは気づきました。
私たちの頭の中には、過去の経験や学習によって蓄積された「これはこうだよね」という認識があります。それ自体は悪いことではありません。経験から学ぶのは大切なことです。
でも、AIの世界では、この「過去の経験」が足を引っ張ることがあります。
「AIってこういうものだよね」という認識。「このやり方がベストだよね」というこだわり。「これはAIにはできないよね」という思い込み。
こういった認知キャッシュが、プロジェクトの進行を遅らせていることに私たちは気づきました。
認知キャッシュがプロジェクトを遅延させる
具体的に、どんな認知キャッシュがプロジェクトを遅延させるのか。
ひとつは、「AIにはこれができない」という思い込みです。
たとえば、「AIに長文を書かせると品質が落ちる」とか「複雑な判断はAIには無理」とか。確かに、以前はそうだったかもしれません。でも、AIの進化は速い。1週間前にできなかったことが、今日できるようになっていることは珍しくありません。
過去の経験に基づいて「これは無理」と決めつけてしまうと、本来できるはずのことに取り組まなくなります。結果として、人間がやる必要のない作業を人間がやり続けることになる。
もうひとつは、「このやり方が正しい」というこだわりです。
「AIを使うときは、こういうプロンプトを書くべき」とか「この手順でやるのが効率的」とか。一度うまくいったやり方に固執してしまう。
でも、AIの使い方は日々進化しています。新しいツールが出てきたり、新しい機能が追加されたり。過去のベストプラクティスが、今日のベストプラクティスとは限りません。
「このやり方でやってきたから」という理由で、非効率なやり方を続けてしまう。プロジェクト全体で見ると、これが大きな遅延要因になっていることがあります。
最後は、「従来のやり方のままやろうとする」ことです。
AIを導入しても、仕事の進め方自体は変えない。たとえば、「調査→企画→制作→確認」という従来のフローをそのまま維持して、各工程でAIを使うだけ。
でも、AIを使うと、そもそもフロー自体を変えられることがあります。調査と企画を同時に進められたり、制作しながら確認できたり。従来の分業を前提にしたやり方が、AIの活用を制限してしまう。
「今までこうやってきたから」という理由で、従来のやり方をそのまま踏襲してしまう。これも、認知キャッシュのひとつです。
個人の生産性は上がっているのに、プロジェクトの成果が変わらない。その原因の多くは、こういった認知キャッシュにあるのではないかと私たちは考えています。
脳をバグらせるゴール設定
では、このキャッシュをどうやってクリアするか。
私たちが有効だと感じているのは、「脳をバグらせるゴール設定」です。
どういうことかというと、従来の延長線上にはないゴールを設定するということです。
たとえば、「このレポート作成を30%効率化しよう」ではなく、「このレポートを1時間で完成させよう」と設定する。従来10時間かかっていたものを1時間にする。これは、従来のやり方の延長では達成できません。
そうすると、「いやいや、それは無理でしょ」という反応が出てきます。
この「無理でしょ」が出てきたとき、認知キャッシュが働いている証拠です。過去の経験に基づいて「できない」と判断している。
でも、「無理」と思いながらも「どうやったらできるか」を考え始めると、思考が変わってきます。従来のやり方を前提にしていては絶対に達成できないので、やり方自体を見直すしかない。
「そもそも、このレポートの目的って何だっけ」「本当に必要な情報って何だっけ」「AIに任せられる部分はどこだっけ」
こうやって、前提から見直すことで、今まで気づかなかった非効率に気づいたり、新しいやり方を発見したりします。
脳をバグらせる、というのは少し過激な表現かもしれませんが、要は「今までの常識をリセットする」ということです。無理だと思うようなゴールを設定することで、強制的にキャッシュをクリアする。私たちはこのアプローチを大切にしています。
失敗しても学習、従来よりは速い
とはいえ、新しいやり方に挑戦すると、失敗することもあります。
「AIに任せてみたけど、思った結果が出なかった」「新しいツールを試してみたけど、うまく使いこなせなかった」
そういう失敗は、当然起きます。
でも、私たちはそれでいいと考えています。
なぜかというと、AI活用はまだ発展途上だからです。確立されたベストプラクティスがあるわけではない。みんな手探りでやっている。だから、試行錯誤に価値があるんです。
失敗しても、それは学習になります。「このやり方はうまくいかなかった」という知見が得られる。次に同じ失敗をしなくて済む。
そして、もうひとつ大事なのは、「失敗しても、従来よりは速くなっている」ということです。
新しいやり方に挑戦して、仮にうまくいかなかったとしても、AIを使っている分、従来の完全手作業よりは速いはずです。失敗の痛みは、思っているほど大きくない。
だから、キャッシュをクリアして、新しいやり方に挑戦することを恐れる必要はないと私たちは考えています。失敗しても学習になるし、どうせ従来よりは速い。
最後に
AIベースのプロジェクトが思うように進まないとき、その原因は意外と自分たちの頭の中にあるかもしれません。
「AIにはこれができない」という思い込み。「このやり方が正しい」というこだわり。「従来のやり方のままやろうとする」という惰性。こういった認知キャッシュが、プロジェクトを遅延させていることがあります。
キャッシュをクリアする方法は、従来の延長線上にないゴールを設定すること。「無理だよね」と思うようなゴールが、実は突破口になります。
失敗を恐れる必要はありません。AI活用はまだ発展途上です。試行錯誤に価値がある。失敗しても学習になるし、従来よりは速くなっている。
まずは、自分の頭の中にどんな認知キャッシュが溜まっているか、振り返ってみてください。「これはこうだよね」と無意識に思い込んでいることはないか。それをクリアして、動いてみる。
プロジェクトの速度は、そこから変わってくると私たちは考えています。
この記事は、社内の知見や実績データを活用し、ユーザーにとって利便性の高いコンテンツを生み出すよう設計されたAIを活用して制作し、マーケターがレビュー・監修した後に公開しています。KAAANは、AIと人の共創によって高品質なコンテンツを効率的に制作しています。
カテゴリ
AIの考え方タグ
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著者
寺倉 大史
Director
業界歴10年以上。マーケティング全体の戦略、プランニング、PM、組織開発など幅広く累計100社以上を支援。藍染職人、株式会社LIG執行役員を経て、デジタルマーケティングカンパニー『MOLTS』を設立。
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寺倉 大史
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業界歴10年以上。マーケティング全体の戦略、プランニング、PM、組織開発など幅広く累計100社以上を支援。藍染職人、株式会社LIG執行役員を経て、デジタルマーケティングカンパニー『MOLTS』を設立。
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