アウトプットのクオリティが低い時、なぜインプットを疑うのか

アウトプットのクオリティが低い時、なぜインプットを疑うのか

アウトプットのクオリティが低い時、なぜインプットを疑うのか

生成AIを使っていると、「思った通りの出力が出ない」と感じる瞬間があります。

プロンプトを何度も書き直す。指示を細かく追加してみる。それでも、どこか期待とズレている。私たちも以前は、そんな試行錯誤を繰り返していました。

しかし最近、私たちはアウトプットを調整する前に、まずインプットを疑うようにしています。

この記事では、生成AIの価値を「ミキシング」という視点で捉え直し、アウトプットの質を上げるために何を見直すべきかをお伝えします。

生成AIの価値は「ミキシング」にある

生成AIは「無から有を生む」魔法のツールではありません。私たちは、生成AIの本質的な価値を「ミキシング」だと捉えています。

料理に例えると分かりやすいと思います。

料理を作るプロセスは、大きく3つに分かれます。

  1. 食材やレシピを集める(用意)
  2. 調理してご飯ができる(調理)
  3. 食べてレビューする(評価)

生成AIがやってくれるのは、2番目の「調理」です。食材とレシピを渡せば、一瞬で料理を作ってくれる。これがミキシングです。

つまり、生成AIの価値は「調理時間をゼロにしてくれる」ことにあります。

ここで重要なのは、調理そのものは生成AIがやるということです。私たちがコントロールできるのは、1番目の「食材やレシピを集める」部分と、3番目の「食べてレビューする」部分だけ。

出来上がった料理がイマイチだったとき、調理のやり方を変えることはできません。生成AIが調理しているからです。

できるのは、食材を変えるか、レシピを変えるか。つまり、インプットを直すしかない。

だから私たちは、アウトプットに不満を感じた時、まずインプットを疑うようにしています。

インプットを3つに分けて考える

「インプットを見直す」と言っても、漠然と全体を眺めていては改善点が見えてきません。

私たちは、インプットを3つに分けて整理しています。

種類 説明 具体例 よくある問題
データ コンテキスト含むあらゆる情報 事例集、背景情報、対象読者 情報が古い、量が少ない
プロンプト 何を進行するかの指示 「要約して」「構造化して」 指示が曖昧、範囲が広すぎる
プロセス 各プロンプトの繋ぎ方 企画→取材→執筆→編集 一発で完成形を求める

それぞれについて、もう少し詳しくお伝えします。

1. データ(コンテキスト含むあらゆる情報)

生成AIに読み込ませる情報すべてです。事例集やFAQ、過去の記事といった参照情報だけでなく、「誰に向けて」「何のために」という背景情報(コンテキスト)も含みます。これが「肉じゃが」で言うところの素材にあたります。

データの質が低い場合、たとえば情報が古い、網羅性がない、そもそも量が少ないといった状態では、どれだけ処理を工夫してもアウトプットには限界があります。

私たちがよく直面するのは、「データはあるが、そのままでは使えない」という状況です。たとえば、過去の議事録は大量にあるけれど、発言がそのまま書き起こされているだけで、要点が整理されていない。こうしたデータは、まずクレンジング(整理・精査)してから使う必要があります。

2. プロンプト(何を進行するかの指示)

生成AIに「何をしてほしいか」を伝える指示です。「この情報を要約して」「箇条書きで整理して」「提案書の形式にまとめて」といったものがこれにあたります。

プロンプトでよくある問題は、指示が曖昧だったり、範囲が広すぎたりすることです。「記事を作って」という指示は、生成AIにとっては推論の幅が広すぎます。どんなトーンで、どんな構成で、どれくらいの長さで書けばいいのかが分からない状態です。

プロンプトは、できるだけ具体的に、範囲を絞って書いた方がクオリティは上がると私たちは感じています。

3. プロセス(各プロンプトの繋ぎ方)

1つのプロンプトで完結させるのではなく、複数のプロンプトをどう繋げてアウトプットまで持っていくかという流れです。

人が記事を作る時のことを考えてみてください。企画を立て、取材をし、執筆し、編集する。このようなプロセスを経て、ようやく1本の記事が完成します。

しかし生成AIに「記事を作って」と一発で頼むと、これらのプロセスをすべてすっ飛ばして、いきなり完成形を作ろうとします。結果として、AIの推論の幅が広すぎて、クオリティは上がりにくくなります。

私たちは、人間がやるプロセスを分解して、それぞれのステップでプロンプトを分けています。「まず企画を作って」「次にこの企画に沿って構成を作って」「この構成に沿って本文を書いて」「最後に全体を調整して」。このように段階を踏むことで、各ステップでのアウトプットの質が上がり、最終的な成果物の質も高くなります。

アウトプットの質が低い時、この3つのうちどこに問題があるのかを特定すると、改善がしやすくなります。データが足りないのか、プロンプトが曖昧なのか、プロセスが雑なのか。原因が分かれば、対処も明確になります。

見落とされがちなプロンプトとプロセス

私たちの経験上、多くの人が見直すのはデータです。「もっと情報を追加しよう」「参照するドキュメントを増やそう」という方向に改善が向かいます。

それ自体は間違っていません。ただ、プロンプトとプロセスが見落とされているケースが意外と多いと感じています。

以前、私たちがクライアント向けの提案書を生成AIで作った時のことです。

参照するデータは十分にありました。クライアントの事業概要、市場データ、競合分析、過去の施策結果。情報量としては申し分ない状態でした。

しかし、「この情報をもとに提案書を作って」と指示したところ、出力された提案書はどこか的を射ていませんでした。正しいことは書いてあるのですが、「だから何なのか」が伝わってこない。

原因を考えた結果、私たちはプロンプトとプロセスの問題に気づきました。

まずプロンプトの問題。「提案書を作って」という指示は、生成AIにとって推論の幅が広すぎたのです。どこに重点を置くのか、どんなトーンで書くのか、何を最も伝えたいのかが曖昧でした。

次にプロセスの問題。提案書を一発で作ろうとしていました。人間が提案書を作る時は、まず課題を整理し、解決策を検討し、優先順位をつけて、それから文書化します。そのプロセスをすっ飛ばしていたのです。

改善として、私たちはプロセスを分解しました。「まずクライアントの課題を3つに整理して」「次に各課題に対する解決策の選択肢を出して」「その中から最適なものを選んで提案書にまとめて」。このように段階を踏んだところ、提案書の質は大きく改善しました。

これは人間の仕事でも同じだと思います。いきなり完成形を目指すより、ステップを踏んだ方が精度が高い。生成AIも、その点は変わらないようです。

インプットとミキシングを分けて考える

もう一つ、私たちが大切にしている考え方があります。

多くの人は、インプットとミキシング(処理)をワンセットで行っています。情報を入れながら、同時に処理もさせる。確かに効率的に見えますが、問題が起きた時に原因の切り分けが難しくなります。

私たちは、できるだけインプットとミキシングを分けて考えるようにしています。

まずインプットを整える。データを集め、クレンジングし、コンテキストを明確にする。その上で、どういうプロセスで処理するかを設計する。

こうすると、アウトプットに問題があった時、「インプットの問題なのか」「プロセスの問題なのか」が切り分けやすくなります。

また、インプットを整える作業と、ミキシングの作業は、別のタイミングで行うことができます。たとえば、データの収集とクレンジングは日中の業務時間に行い、実際の処理は夜間に自動で走らせておく、といった運用も可能になります。

インプットとミキシングを分けて考えることで、生成AIを使った業務設計の自由度が上がると私たちは感じています。

最後に

生成AIのアウトプットに不満を感じた時、私たちはまずインプットを疑うようにしています。その理由と考え方を、この記事でお伝えしてきました。

ポイントを整理します。

  1. 生成AIの価値は「ミキシング」にあり、アウトプットは入れたもの(インプット)に大きく依存する
  2. インプットは「データ」「プロンプト」「プロセス」の3つに分けて点検すると、改善点が見えやすくなる
  3. 特にプロンプトとプロセスは見落とされがち。「記事を作って」と一発で頼むのではなく、人間のワークフローを分解してプロセス化する
  4. インプットとミキシングを分けて考えると、問題の切り分けがしやすくなり、業務設計の自由度も上がる

プロンプトを何度も書き直すより、インプットを見直した方が近道かもしれません。

生成AIは魔法のツールではなく、良い素材を良い形で混ぜ合わせてくれる調理器具のようなもの。そう考えると、力を入れるべきポイントが見えてくるのではないでしょうか。

私たちも日々試行錯誤しながら、より良いインプットの作り方を模索しています。この記事が、皆さんの参考になれば幸いです。

カテゴリ

AIの考え方

タグ

AI

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著者

寺倉 大史

寺倉 大史

Director

業界歴10年以上。マーケティング全体の戦略、プランニング、PM、組織開発など幅広く累計100社以上を支援。藍染職人、株式会社LIG執行役員を経て、デジタルマーケティングカンパニー『MOLTS』を設立。

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