新しくマーケティング施策を立ち上げたり、新規事業を企画したりする際には、「何か参考になるアイデアが欲しい」と感じることが多い。そんなとき、多くの人はまず競合の事例を調べるが、実際には「自社では再現できない」と感じることも少なくない。たとえば、「予算が違う」「サービス内容が不足していて真似できない」「すでに他社が先に進んでいて後発では厳しい」といった理由から、使えそうなアイデアが見つからないケースはそう珍しくない。もちろん、最初から完璧なアイデアがなくても問題ないし、無理に探さなくても進める方法はある。ただ、何かしらヒントが欲しい場合や、新しい視点を得たいときには、「競合」ではなく「類似市場」から着想を得る方法が効果的だ。自社と完全に同じではないけれど、一部が重なる市場や事業からのアイデアは、ちょうどよい刺激になり、再現性も持たせやすい。
競合の事例を調べても良いアイデアがない、と行き詰まったときは、類似市場を探すといいアイデアが得られることがある。類似市場を探すときは、いきなり具体的な企業や業界を見るのではなく、自社のサービスやターゲットを抽象化するところから始めると良い。やり方としては、まず、今考えているテーマを4つ以上の項目に分解してみる。たとえば、「20代向けメンズ / 美容のD2C事業を立ち上げたいとなった時、次のような類似市場が考えられる。「20代向け・男性・美容系・D2C」そのうえで、少なくとも2つ以上の項目が共通する市場を探していく。今回の例だと、次のような類似市場が考えられる。・20代男性向け / アパレルショップ(ターゲットと販売モデルが共通)・女性向け / 美容D2C事業(プロダクト軸と販売モデルが共通)・メンズ向け / サプリD2C事業(ターゲットとプロダクト性が共通) 共通項が1つだけでも着想のヒントにはなるが、2つ以上あると、より具体的で再現しやすく、差別化しやすいアイデアに出会いやすくなる。競合市場ではアイデアが似通いやすいが、少し離れた類似市場では、同じ課題に対してまったく違うアプローチが取られていることもある。そうした違いこそが、視野を広げるヒントになる。「今の自社には真似できない」と感じたときこそ、一歩引いて類似市場を見る。そうすることで、無理なく自社にも落とし込める、新しい戦略のきっかけがそこにある。