新しいマーケティング施策や新規事業をつくるなど、これまでになかった何かを生み出そうとしたとき、最初のステップとなるのが「構想」。ここで重要なのが、楽観的な姿勢である。日本を代表する経営者である稲盛和夫氏の言葉に「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」というものがある。この言葉にあるように、構想フェーズでは現実的な考え方よりも、「それが実現したらどうなるか?」という楽観的な発想が大事になる。しかし、チームに保守的・ネガティブ思考の人がいると、アイデアが生まれる前に否定され、あらゆる可能性がつぶされてしまうことがある。たとえば、コーヒー豆の商社がカフェ事業を始めようと構想したときに、 ・飲食業は儲からないからやめたほうがいい ・カフェ運営の実績がないから無理といった意見で話が止まってしまうケースがある。 ただ、構想段階では「どうすれば実現できそうか」を考えることが重要だ。たとえば、 ・カフェを営業先との接点づくりや、卸先の新商品紹介の場に活用する ・初期投資を抑えて小さく始める ・自社ブランド展開のテストとして使う ・廃業した方に声をかけて採用する など、前向きに考えることで見えてくる選択肢は多い。最初からリスクを避けるのではなく、「どう実現するのか?」「他に面白い展開の可能性はないか?」「他に価値はないか?」など、まずは可能性を広げていく姿勢が求められる。
構想段階でやるべきことは、アイデアの芽をつぶさないことが最優先。そのため、基本的に否定から入るタイプの人は、この段階ではあえて入れないようにする。たとえその人が役職者だったとしても、構想の早い段階でネガティブな意見が出ると、チーム全体の動きが止まり、前に進めなくなるからだ。一方で、構想フェーズが終わり、実行に向けた計画フェーズに入ったら、そうした保守的な視点は一気に価値を発揮する。たとえば、 ・想定よりコストがかかるリスク ・想定ユーザーとのギャップ ・継続的な運営体制の課題 など、楽観的な構想だけでは見えなかったリスクやボトルネックが浮かび上がってくる。ここで初めて「現実的にやれるのか?」という視点が必要になる。つまり、プロジェクトには「いつ・誰を巻き込むか」の設計が必要であり、それによってアイデアの生まれ方や実行までのスピードが大きく変わってくる。新しいことを始めるときこそ、構想段階ではアイデアが自由に広がる場をつくる。批判やリスクの洗い出しは、やると決めてからでいい。この順番を間違えないことが、アイデアを前に進める上でのポイントになる。