
UI改善の進め方を解説|基本プロセスから実践のポイントまで
デジタルサービスの普及により、Webサイトやアプリケーションのユーザーインターフェース(UI)は、事業成果を左右する重要な要素となっています。使いやすいUIを提供できれば、ユーザーの満足度が高まり、コンバージョン率の向上やリピーターの獲得につながります。
一方で、以下のような声も増えています。
- UI改善に取り組みたいが、何から始めればいいかわからない
- 改善施策を実施しても、効果があったのか判断できない
- デザインの専門家がいない中で、どのように改善を進めればいいのかわからない
そこで本記事では、UI改善の基本的な考え方から具体的な実践プロセス、継続的な改善体制の構築方法まで解説します。専門的なデザイン知識がなくても取り組める内容を中心に、ビジネス成果につながるUI改善の進め方をご紹介します。
目次
UI改善とは何か
UI改善に取り組む前に、まずUIの定義や、UXとの関係性を正しく理解しておくことが重要です。この章では、UI改善の基本概念と、事業成果との関係について解説します。
UIとUXの違いと関係性
UI(User Interface)とは、ユーザーとサービスの「接点」を指します。具体的には、Webサイトのボタン、メニュー、フォーム、色使い、フォントなど、ユーザーが目にして操作するすべての要素がUIに該当します。
一方、UX(User Experience)とは、サービスを通じてユーザーが得る「体験」全体を指します。サービスを認知してから、利用中、利用後に至るまでの一連の体験がUXに含まれます。
UIとUXは密接に関係しています。優れたUIは、ユーザーが迷わずに目的を達成できる体験を提供し、結果としてUXの向上につながります。逆に、使いにくいUIは、たとえサービスの内容が優れていても、ユーザー体験を損なう原因となります。
UI改善に取り組む際は、単にデザインを変更するのではなく、「その変更がユーザー体験をどのように向上させるか」という視点を持つことが重要です。見た目の美しさだけでなく、ユーザーが目的を達成するまでの導線や、操作のしやすさを考慮した改善が求められます。
UI改善が事業成果に与える影響
UI改善は、単なるデザインの問題ではなく、事業成果に直結する重要な取り組みです。
まず、UIの改善はコンバージョン率の向上につながります。入力フォームの使いやすさを改善するだけで、離脱率が大幅に下がるケースは少なくありません。ユーザーが迷わずに目的を達成できるUIを提供することで、問い合わせ数や購入数の増加が期待できます。
実際、ある企業では、検索上位を獲得した記事について、記事内CTAやUIの設計・改修を徹底的に行いました。ユーザーの状況・動機・ニーズに応じてCTA配置や訴求内容をチューニングした結果、お問い合わせが大幅に増加。さらに、CTAクリックが増えるとお問い合わせフォームでの離脱が課題化したため、フォーム項目の簡略化やUI見直しなどEFO(Entry Form Optimization)施策も実施しました。このように、キーワード獲得だけでなくCVR改善も徹底したことで、立ち上げ半年で月数十件、1年後には月100件を超えるお問い合わせが生まれる結果となりました。
また、UIの改善はユーザーの満足度向上にも寄与します。ストレスなく操作できるサービスは、ユーザーからの評価が高まり、リピート利用や口コミによる新規ユーザーの獲得につながります。競合サービスが増える中で、UIの使いやすさは差別化の重要な要素となっています。
さらに、UI改善はカスタマーサポートの負担軽減にも効果があります。「使い方がわからない」「エラーが発生した」といった問い合わせの多くは、UIの改善によって未然に防ぐことができます。サポートコストの削減は、間接的に事業収益の向上に貢献します。
このように、UI改善はユーザー満足度の向上とビジネス成果の両立を実現する施策と言えます。投資対効果を意識しながら、優先度の高い改善ポイントから着手することが重要です。
UI改善に取り組むべきタイミング
UI改善は継続的に取り組むべきものですが、特に以下のようなタイミングでは優先的に検討する価値があります。
コンバージョン率が低下しているとき
問い合わせ数や購入数が減少傾向にある場合、UIに問題がある可能性があります。ユーザーの行動データを分析し、離脱が多いポイントを特定することで、改善すべき箇所が見えてきます。
ユーザーからのフィードバックが増えているとき
「使いにくい」「わかりにくい」といった声が増えている場合は、UIの見直しが必要なサインです。具体的な改善要望がある場合は、優先的に対応を検討します。
サービスの機能追加や仕様変更を行うとき
新機能の追加や既存機能の変更を行う際は、UI全体の整合性を見直す良い機会です。個別の機能改修だけでなく、サービス全体としての使いやすさを確認します。
競合サービスとの比較で劣位に立っているとき
競合サービスと比較して「使いにくい」と感じる場合は、UIの改善を検討すべきです。ただし、単に競合を模倣するのではなく、自社サービスの特性に合った改善を行うことが重要です。
いずれのタイミングでも、感覚的な判断ではなく、データや具体的なフィードバックに基づいて改善の優先度を決定することが成功の鍵となります。
UI改善の基本プロセス
UI改善を効果的に進めるためには、体系的なプロセスに沿って取り組むことが重要です。この章では、「現状分析」「改善案の立案」「テストと検証」という3つのステップについて解説します。
現状分析と課題の特定
UI改善の第一歩は、現状のUIにどのような問題があるのかを客観的に把握することです。感覚的な判断ではなく、データに基づいて課題を特定することで、効果的な改善につなげることができます。
定量データの分析
まず、アクセス解析ツールを活用して、ユーザーの行動データを分析します。確認すべき指標としては、各ページの離脱率、フォームの入力完了率、ボタンのクリック率などがあります。
特に注目すべきは「離脱が多いポイント」です。コンバージョンに至るまでの導線の中で、どこでユーザーが離脱しているかを把握することで、改善すべき箇所が明確になります。
ある企業では、PVは増加しているもののリード獲得につながらないという課題を抱えていました。データ分析を進める過程で、PV重視のキーワード選定と、CV無視の作りっぱなしコンテンツという課題が明らかになりました。このように、定量データを詳細に分析することで、表面的には見えない問題点を発見できます。
定性データの収集
定量データだけでは「なぜ離脱しているのか」という原因まではわかりません。ユーザーインタビューやアンケート、カスタマーサポートへの問い合わせ内容などの定性データを収集し、ユーザーの声を把握することが重要です。
また、ヒートマップツールを活用することで、ユーザーがページ内のどこを見ているか、どこをクリックしているかを可視化できます。想定していた導線とユーザーの実際の行動にズレがないかを確認します。
課題の優先順位付け
分析の結果、複数の課題が見つかることが一般的です。すべてを同時に改善することは難しいため、以下の観点で優先順位を付けます。
- ビジネスへの影響度:改善によるコンバージョン向上の期待値
- 改善の実現可能性:必要なリソースや技術的な難易度
- ユーザーへの影響度:改善によるユーザー体験向上の度合い
優先度の高い課題から着手することで、限られたリソースの中でも効果的な改善を実現できます。
改善案の立案とプロトタイピング
課題が特定できたら、次は具体的な改善案を検討します。この段階では、完璧な解決策を目指すのではなく、「仮説としての改善案」を素早く形にすることが重要です。
改善の方向性を決める
特定した課題に対して、どのような改善アプローチが考えられるかを検討します。例えば「フォームの入力完了率が低い」という課題に対しては、以下のような改善方向性が考えられます。
- 入力項目を削減する
- エラーメッセージをわかりやすくする
- 入力の進捗状況を可視化する
- 入力例を表示する
複数の改善案を挙げた上で、効果と実現可能性のバランスを考慮して、実施する施策を決定します。
プロトタイプの作成
改善案が決まったら、実際のUIを変更する前にプロトタイプを作成します。プロトタイプとは、改善後のUIを簡易的に再現したものです。
プロトタイプを作成することで、以下のメリットがあります。
- 改善案の具体的なイメージを関係者間で共有できる
- 実装前にユーザーの反応を確認できる
- 問題点を早期に発見し、修正コストを抑えられる
プロトタイプの作成には、FigmaやAdobe XDなどのデザインツールが一般的に使われています。ただし、紙に手書きしたワイヤーフレームでも、初期段階の検討には十分に機能します。
重要なのは、完璧なデザインを目指すことではなく、「素早く検証できる仮のUI」を作ることです。検証を通じて改善案をブラッシュアップしていくアプローチが、結果的に良いUIにつながります。
テストと検証の実施方法
改善案をプロトタイプとして形にしたら、実際にユーザーに使ってもらい、効果を検証します。検証を経ずに本番環境に反映すると、予想外の問題が発生するリスクがあります。
ユーザビリティテストの実施
ユーザビリティテストとは、実際のユーザーにプロトタイプを操作してもらい、使いやすさを評価する手法です。テスト参加者には特定のタスク(例:商品を購入する、問い合わせフォームを送信する)を実行してもらい、その過程で発生した問題点や戸惑いを記録します。
テストを実施する際のポイントは以下の通りです。
- テスト参加者は実際のターゲットユーザーに近い属性の人を選ぶ
- タスクは具体的で測定可能なものを設定する
- 参加者の発言や行動を記録し、後で分析できるようにする
- 誘導的な質問を避け、参加者の自然な行動を観察する
ユーザビリティテストは、大規模に行う必要はありません。少人数のテストでも、主要な問題点は発見できることが多いです。
A/Bテストによる効果検証
本番環境での効果を検証するには、A/Bテストが有効です。A/Bテストとは、既存のUI(A)と改善案のUI(B)を並行して表示し、どちらがより良い成果を出すかを比較する手法です。
A/Bテストを実施することで、「この改善によって本当にコンバージョン率が向上したか」を客観的に判断できます。感覚的な評価ではなく、データに基づいた意思決定が可能になります。
ただし、A/Bテストには十分なサンプル数が必要です。アクセス数が少ないページでは、統計的に有意な結果を得るまでに時間がかかる場合があります。その場合は、ユーザビリティテストの結果を重視した判断を行います。
地道なチューニングの重要性
UI改善においては、一度の大きな変更よりも、地道なチューニングの積み重ねが効果を発揮することが多いです。
ある企業では、どの記事にも「お問い合わせ」のCTAが設置されていましたが、お問い合わせはほとんど発生していませんでした。これは、検索エンジンから訪問するユーザーのニーズやモチベーションに、訴求内容がマッチしていなかったためです。そこで、記事それぞれに対し、CVポイントとなるコンテンツと、そのコンテンツに誘導するためのCTAパターンを精査。「お問い合わせ」に限らず、「お役立ち資料」や「調査レポート」のダウンロードなども用意し、ダウンロードフォームの改修にも着手しました。記事訪問からフォーム完了まで、一連のコミュニケーションとしてつながるよう導線設計を行い、CTAのクリックやCVの発生状況を見ながら、地道なチューニングを繰り返しました。
この取り組みの結果、半期で約100件程度だったリード件数は、1年で約1,000件と10倍に拡張しました。このように、ユーザーのニーズに合わせた細かな調整の積み重ねが、大きな成果につながります。
検証結果の反映と次のサイクルへ
テストの結果を踏まえて、改善案を修正するか、本番環境に反映するかを判断します。期待した効果が得られなかった場合は、課題の特定に立ち返り、別のアプローチを検討します。
UI改善は一度で完了するものではありません。検証結果を踏まえて改善を重ねることで、より良いUIに近づいていきます。
UI改善で押さえるべきポイント
UI改善を効果的に進めるためには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。この章では、「ユーザー視点」「データ活用」「一貫性」という3つの観点から解説します。
ユーザー視点に立った課題発見
UI改善において最も重要なのは、ユーザー視点で課題を発見することです。デザイナーや開発者の視点だけで改善を進めると、実際のユーザーにとっては使いにくいUIになってしまう可能性があります。
ペルソナの設定
まず、UIを使用するユーザー像を具体的に定義します。年齢、職業、ITリテラシー、利用シーンなどを想定し、「誰のためのUI」なのかを明確にします。
ペルソナを設定することで、「このユーザーならどう感じるか」「どこで迷うか」を具体的にイメージできるようになります。関係者間で共通のユーザー像を持つことで、改善の方向性を統一できます。
ユーザーの行動を観察する
ユーザー視点を獲得するためには、実際のユーザーの行動を観察することが効果的です。ユーザビリティテストやインタビューを通じて、ユーザーがどのようにサービスを利用しているかを把握します。
観察の際は、ユーザーの「発言」だけでなく「行動」にも注目します。ユーザーは自分の行動を正確に説明できないことがあるため、実際の操作を見ることで隠れた課題を発見できます。
ニーズとモチベーションの違いを理解する
同じページを訪れるユーザーでも、その背景にあるニーズやモチベーションは異なります。どのような経路で訪れたか、どのような情報を求めているかによって、適切なUI設計は変わってきます。
例えば、検索エンジンから特定のキーワードで訪れたユーザーと、トップページから回遊してきたユーザーでは、求める情報の深さや次のアクションへの準備度が異なります。ユーザーの行動変容を促すためには、そのニーズやモチベーションに合わせた適切な訴求を、適切なタイミングで行うことが欠かせません。
自分自身がユーザーになる体験
日常的に自社のサービスを利用し、ユーザーとしての体験を積むことも重要です。「初めてこのサービスを使う人はどう感じるか」という視点で、定期的にUIを見直す習慣を持ちます。
また、競合サービスや他業界のサービスを積極的に利用することで、「使いやすいUI」の感覚を養うことができます。良いUIの引き出しを増やすことで、自社のUI改善にも活かせます。
データに基づく改善判断
UI改善では、感覚的な判断ではなく、データに基づいた意思決定が重要です。データを活用することで、改善の優先度を客観的に判断し、効果を定量的に測定できます。
分析ツールの活用
UI改善に役立つデータを収集するために、アクセス解析ツールやヒートマップツールを活用します。
アクセス解析ツールでは、ページごとの離脱率、コンバージョンに至るまでの導線、ユーザーの流入経路などを把握できます。「どこに問題があるか」を特定するための基本的なデータを提供します。
ヒートマップツールでは、ページ内でのユーザー行動をより詳細に分析できます。どこがクリックされているか、どこまでスクロールされているかを視覚的に把握でき、具体的な改善ポイントの特定に役立ちます。
ファネル分析による課題特定
ファネル分析とは、ユーザーがコンバージョンに至るまでの各ステップでの離脱率を分析する手法です。例えば、ECサイトでは「商品一覧→商品詳細→カート追加→決済画面→購入完了」という流れの各ステップで、どれだけのユーザーが離脱しているかを可視化します。
離脱率が高いステップを特定することで、改善すべき優先度の高いポイントが明確になります。限られたリソースを効果的に配分するために、ファネル分析は有効な手法です。
効果測定の重要性
改善施策を実施した後は、必ず効果を測定します。「改善したつもり」ではなく、データで効果を確認することで、次の改善に活かせる知見が得られます。
効果測定の際は、施策実施前後の比較だけでなく、外部要因(季節変動、キャンペーンなど)も考慮する必要があります。可能であれば、A/Bテストによって純粋な施策効果を測定することが望ましいです。
一貫性のあるデザイン設計
UIの一貫性は、ユーザーの学習コストを下げ、使いやすさを向上させる重要な要素です。ページによってデザインやインタラクションが異なると、ユーザーは混乱し、操作に迷いが生じます。
デザインルールの統一
色使い、フォント、ボタンのスタイル、アイコンなどのデザイン要素は、サービス全体で統一します。デザインルールを明文化し、「デザインガイドライン」や「スタイルガイド」として共有することで、一貫性を維持しやすくなります。
特に、行動を促すボタン(CTA)のデザインは統一することが重要です。「このボタンを押すと何かが起こる」という認識をユーザーに持ってもらうことで、迷いなく操作を進められます。
インタラクションパターンの統一
同じ操作に対しては、同じ挙動をするように設計します。例えば、「削除」の操作は常に確認ダイアログを表示する、「保存」は常に画面上部にメッセージを表示するなど、パターンを統一します。
一貫したインタラクションは、ユーザーが「次に何が起こるか」を予測できるようにします。予測可能なUIは、ユーザーに安心感を与え、操作のストレスを軽減します。
プラットフォームの慣習に従う
Web、iOS、Androidなど、各プラットフォームにはそれぞれの慣習やガイドラインがあります。ユーザーは日常的にこれらのプラットフォームを使用しているため、慣習に沿ったUIは学習コストが低くなります。
独自のUIパターンを採用する場合は、その必要性を慎重に検討します。「慣習と異なるがゆえの新鮮さ」よりも、「慣習に沿った使いやすさ」を優先することが、多くの場合において正解です。
UI改善を成功させるフレームワーク
UI改善を体系的に進めるためには、フレームワークを活用することが効果的です。この章では、実務で活用できる3つのフレームワークについて解説します。
HEARTフレームワークの活用
HEARTフレームワークは、ユーザー体験を測定するための指標を体系化したものです。5つの要素から構成され、それぞれがUIの異なる側面を評価します。
Happiness(満足度)
ユーザーの主観的な満足度を測定します。アンケートやNPS(Net Promoter Score)などを通じて、ユーザーがサービスに対してどのような感情を持っているかを把握します。
Engagement(エンゲージメント)
ユーザーがサービスにどれだけ関与しているかを測定します。訪問頻度、滞在時間、利用機能数などが指標となります。
Adoption(採用)
新規ユーザーがサービスをどれだけ利用開始しているかを測定します。新規登録数、初回利用完了率などが指標となります。
Retention(継続)
既存ユーザーがサービスを継続して利用しているかを測定します。再訪問率、解約率などが指標となります。
Task success(タスク成功)
ユーザーが目的のタスクをどれだけ成功裏に完了できているかを測定します。タスク完了率、エラー発生率、タスク完了時間などが指標となります。
HEARTフレームワークを活用することで、UI改善の効果を多角的に評価できます。単一の指標に頼るのではなく、複数の観点からUIの品質を把握することが重要です。
Goals-Signals-Metricsによる指標設計
Goals-Signals-Metrics(GSM)は、UI改善の目標を具体的な指標に落とし込むためのプロセスです。漠然とした改善目標を、測定可能な形に変換します。
Goals(目標)の設定
まず、UI改善で達成したい目標を明確にします。「ユーザー体験を向上させる」といった抽象的な目標ではなく、「フォームの入力完了率を向上させる」「ユーザーの満足度を高める」など、具体的な目標を設定します。
目標は、ビジネス目標と紐づけることが重要です。UI改善が最終的にどのようなビジネス成果につながるのかを意識しながら、目標を設定します。
Signals(シグナル)の特定
次に、目標の達成度を示す兆候(シグナル)を特定します。例えば、「フォームの入力完了率を向上させる」という目標に対しては、以下のようなシグナルが考えられます。
- ユーザーがフォームを最後まで入力する
- 入力エラーが発生しない
- 入力にかかる時間が短い
シグナルは、目標が達成されたときにユーザーの行動として観察できるものです。
Metrics(指標)の定義
最後に、シグナルを定量的に測定するための指標を定義します。上記の例では、以下のような指標が設定できます。
- フォーム完了率(フォーム開始数に対する送信完了数の割合)
- エラー発生率(入力回数に対するエラー発生回数の割合)
- 平均入力時間(フォーム開始から送信完了までの時間)
指標を定義することで、改善の効果を客観的に測定できるようになります。定期的に指標をモニタリングし、改善が進んでいるかを確認します。
カスタマージャーニーに基づく改善設計
カスタマージャーニーとは、ユーザーがサービスを認知してから利用、離脱するまでの一連の流れを可視化したものです。UI改善をカスタマージャーニーの文脈で捉えることで、より効果的な改善が可能になります。
ユーザーの行動を時系列で整理する
まず、ユーザーがサービスを利用する際の行動を時系列で整理します。例えば、ECサイトであれば以下のような流れが考えられます。
- 検索や広告からサイトを訪問する
- 商品を探す・比較する
- 商品をカートに追加する
- 決済情報を入力する
- 購入を完了する
- 商品を受け取る・利用する
各ステップでユーザーがどのような行動をとり、どのような感情を抱くかを整理します。
タッチポイントごとの課題を特定する
カスタマージャーニーの各ステップ(タッチポイント)ごとに、UIの課題を特定します。「このステップでユーザーが離脱している」「このステップでユーザーが迷っている」といった課題を洗い出します。
課題を特定する際は、定量データ(アクセス解析)と定性データ(ユーザーの声)を組み合わせることで、より精度の高い課題把握が可能になります。
ジャーニー全体を通じた改善設計
個別のUIパーツを改善するだけでなく、カスタマージャーニー全体を通じた体験を改善する視点が重要です。ある画面での改善が、前後の画面との整合性を損なうことがないか、ジャーニー全体を俯瞰して確認します。
また、カスタマージャーニーを可視化することで、組織内の認識を統一できます。マーケティング、デザイン、開発など異なる部門が同じジャーニーを見ながら議論することで、一貫性のある改善が実現します。
UI改善を継続するための体制構築
UI改善は一度で完了するものではなく、継続的に取り組むことで効果を発揮します。この章では、改善を継続するための体制構築について解説します。
PDCAサイクルの回し方
UI改善を継続的に進めるためには、PDCAサイクルを確立することが重要です。計画、実行、検証、改善のサイクルを回すことで、着実に成果を積み上げていきます。
Plan(計画)
改善すべき課題を特定し、具体的な施策を計画します。前述の通り、データに基づいて課題を特定し、優先順位を付けることが重要です。
計画段階では、以下の要素を明確にします。
- 改善の目的と目標(KPI)
- 具体的な改善施策
- 実施スケジュールとリソース
- 効果測定の方法
Do(実行)
計画に基づいて、改善施策を実行します。プロトタイプの作成、ユーザビリティテスト、本番環境への反映などを進めます。
実行段階では、「完璧を目指して時間をかける」よりも「素早く実行して検証する」姿勢が重要です。小さな改善を積み重ねることで、大きな成果につながります。
Check(検証)
施策の効果を測定し、目標に対する達成度を評価します。計画段階で設定したKPIを確認し、改善が成果につながっているかを判断します。
効果が出ていない場合は、その原因を分析します。施策自体に問題があったのか、実行方法に問題があったのか、外部要因の影響があったのかを切り分けます。
Action(改善)
検証結果を踏まえて、次のアクションを決定します。効果があった施策は継続・拡大し、効果がなかった施策は見直しや中止を検討します。
PDCAを高速で回すことの重要性
PDCAサイクルを回す際のポイントは、サイクルの速度を上げることです。検証から次の計画までの時間を短縮することで、より多くの改善を実施できます。
ある企業では、仮説立案・検証・成果獲得・拡大というPDCAを高速で回すことで、好循環を確立しました。週次、さらには日次でのモニタリング体制を構築し、細かな変化を見逃さないようにしたことが成功の要因でした。検証を行って成果が得られた施策には追加投資し、効果が薄い施策は早期に見切りをつける。このサイクルを高速で回すことで、限られたリソースでも大きな成果を上げることができます。
組織としての改善文化の醸成
UI改善を継続するためには、組織として改善に取り組む文化を醸成することが重要です。特定の個人の努力に依存するのではなく、組織全体で改善を推進する体制を構築します。
共通の目標と指標の設定
組織全体で共有できる目標と指標を設定します。「ユーザー満足度を向上させる」「コンバージョン率を改善する」といった目標を、関係者全員が認識し、追いかける状態を作ります。
目標は、経営層から現場担当者まで一貫して理解されている必要があります。なぜその目標を追うのか、その目標が達成されると事業にどのような影響があるのかを、繰り返し伝えることが重要です。
定期的な振り返りの実施
週次や月次で、改善の進捗を振り返る機会を設けます。KPIの推移を確認し、うまくいっていること、いっていないことを共有します。
振り返りの場では、失敗を責めるのではなく、学びを共有する姿勢が重要です。「この施策はうまくいかなかったが、こういう学びがあった」という形で知見を蓄積していきます。
ユーザーの声を共有する仕組み
カスタマーサポートに寄せられる問い合わせ、ユーザーアンケートの結果、ユーザビリティテストの記録など、ユーザーの声を組織内で共有する仕組みを構築します。
ユーザーの声に日常的に触れることで、組織全体のユーザー視点が養われます。開発者やデザイナーが直接ユーザーの声を聞く機会を設けることも効果的です。
外部パートナーの活用判断
UI改善を進める中で、外部のパートナーを活用するかどうかの判断が必要になる場合があります。社内リソースだけで対応するか、外部の専門家を頼るかを検討します。
外部パートナーを活用すべきケース
以下のような場合は、外部パートナーの活用を検討する価値があります。
- 社内にUI/UXの専門知識を持つ人材がいない
- 大規模なリニューアルを短期間で実施する必要がある
- 客観的な第三者視点での評価が必要
- 特定の技術やツールに関する専門知識が必要
外部パートナーは、複数の企業での経験を通じて培った知見を持っています。自社だけでは気づかない視点や、業界のベストプラクティスを提供してもらえることが期待できます。
パートナー選定のポイント
外部パートナーを選定する際は、以下の点を確認します。
- 類似業界や類似課題での支援実績
- 提供するサービスの範囲(戦略立案から実行まで対応できるか)
- コミュニケーションの取りやすさ
- 費用対効果
単に「安いから」という理由で選定するのは避けるべきです。UI改善は事業成果に直結する重要な取り組みであり、質の高いパートナーを選ぶことが成功の鍵となります。
内製化を見据えた協業
外部パートナーを活用する場合でも、中長期的には社内でUI改善を進められる体制を目指すことが望ましいです。パートナーと協業しながらノウハウを吸収し、徐々に内製化を進めていく計画を立てます。
外部パートナーには、単に作業を代行してもらうのではなく、社内の人材育成や体制構築も含めて支援してもらうことで、持続可能な改善体制を構築できます。
まとめ
UI改善は、ユーザー体験の向上とビジネス成果の両立を実現する重要な取り組みです。本記事では、UI改善の基本的な考え方から具体的な実践プロセスまでを解説しました。
UI改善を成功させるためのポイントは以下の通りです。
ユーザー視点を持つこと
デザイナーや開発者の視点ではなく、ユーザー視点で課題を発見し、改善を進めることが重要です。ペルソナの設定やユーザーテストを通じて、ユーザーの声を把握します。また、ユーザーのニーズやモチベーションは一様ではないため、それぞれに合わせた適切な訴求を、適切なタイミングで行うことが成果につながります。
データに基づいて判断すること
感覚的な判断ではなく、データに基づいて改善の優先度を決定し、効果を測定します。アクセス解析ツールやヒートマップツールを活用して、客観的な根拠を持った改善を進めます。
継続的に改善サイクルを回すこと
UI改善は一度で完了するものではありません。PDCAサイクルを確立し、継続的に改善を重ねることで、より良いUIに近づいていきます。組織として改善に取り組む文化を醸成することが、長期的な成果につながります。地道なチューニングの積み重ねが、大きな成果を生み出します。
UI改善に取り組む際は、これらのポイントを意識しながら、自社の状況に合った形で実践していくことが重要です。小さな改善から始めて、成功体験を積み重ねていくことで、着実に成果を出せる体制が構築できます。
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